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水谷イズル展
ギャラリー揺 シリーズ企画「移行」2 
水谷イズル展 moment to moment(2010.4.6~18)を終えて

水谷イズル氏は1961年生まれ。平面と立体を組み合わせた作品や光や映像、水などを使ったインスタレーション作品を発表。国内外で高い評価を得て、パリ、ニューヨーク、北京、上海、ソウル、サンクトペテルブルグ、ヘルシンキなどで活躍中です。一方、1990年から名古屋テレビ映像にTVディレクターとして勤務。ハイビジョン番組、海外ドキュメンタリー、教育、福祉、美術番組などを多数制作して、2000年に独立。NHK BS フォーラム「美術館が街を変える」金沢21世紀美術館カウントダウンフォーラム、大野一雄のDVDビデオ(NHK ソフトウェアー)などを担当されました。

2007年秋に「鏡展~微瞳みと反射~」展(京都精華大学ギャラリーフロール)で水谷さんの映像作品を観て、揺・シリーズ企画展に出品をお願いしましたところ、近年の過密スケジュールにもかかわらず引き受けて頂き展覧会を開く事ができました。

作品は洋室に4点、和室に1点、庭に1点で総点数6点です。
洋室 1 moment to moment
2 one minute in the life
3 sky underground
4  a drop of the sky
和室 5 カイロスの鏡
庭  6 sky water

work 1

作品「moment to moment」の部分写真です。
満月から三日月までの5つの月と愛知県瀬戸の風景を凝縮して重ね、時間の移行を表現した作品です。

work 2

作品「one minute in the life」
役者さんを1分間撮影した中からのコマ撮り5枚をガラスに焼き付けた作品です。
微妙なズレが立体的に迫ってきます。

作品「sky underground」
普通、空は見上げますが、洋室の床に開けた小さな穴を覗いて、その中に大きな空を見下げます。そこには切り取られた自然が滴で揺らぎながら広がります。人が床の穴を覗いている時に、まだ観ぬ人は覗きたい要求に駆られ未来への時間を長く遅く感じ、もう観てしまった人は覗いている人を見ながら、過去に居た自分の時間を短く早く感じます。(この作品の写真はありません)
work 3

作品「a drop of the sky」
これも下向きに見下げて空の滴を覗き込みます。小さなガラスの中に複雑な空を解釈するのは複雑で面白く、難解です。

work 4

work 5

作品「カイロスの鏡」
映像の滴が落ちる昼間の青空から日が沈み、夜空に星が輝き月が昇ります。現実ではない架空の時間を5分間で体験します。月は三日月、半月、満月の3種類あり、それぞれ5分間の映像です。
ギリシャ神話の「時の神」クロノスとカイロスの説明を少し。
クロノスは外的な時間で人間が決めた客観的な時計によって経過、持続等を横軸表記します。カイロスは内的な時間で、夢中になっていると時間が早く過ぎる主観的な時間で、時を刻む縦軸表記をします。いわゆる感覚的な時間です。
次に月の話しを少し。
中国から月を観賞する習慣が伝わって以来、日本各地に月見の名所があり、近くの銀閣寺には、月の光を反射して銀閣を照らすという向月台があります。当画廊のオープン展「月二架ケル」以来、久し振りに月をメインテーマに取り上げた展覧会でした。私達日本人は暗い夜空に澄んだ明るい月を見つけて思いを巡らせ楽しみますが、ヨーロッパでは満月は人の心をかき乱し、狂わせるものである考え方があります。例えば、月の女神が死を暗示し、月を見て狼男に変身するなどに思想が現れています。水谷さんの揺らぐ月は異次元の月で、カイロスの鏡には過去も未来も現在も同時に存在し、時空を超えた自分が見えそうです。

work 6

作品「sky water」
室内作品は映像の水滴をあたかも本物の水滴のように錯覚して観ますが、庭では本物の水滴を使った作品で、石畳の上に置かれたクリスタルガラスの器に水滴が落ち、きれいに磨かれた鏡面ステンレス板には周囲の空や樹木が映り込みます。2つの違いから感じる記憶の混乱の中から、予測できない動きが現れます。

現在、水谷さんは2008年に組織されたグループproject NoA(Neuron of Artists)のメンバーで、各専門分野を神経細胞のように網羅してワールドワイドの活動(展覧会企画・立案、芸術家・芸術関係者の仲介等)を展開中です。月を愛でる日本人の感性を国際的に広げてご活躍されることを期待しています。

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04/28 21:54 | 展覧会
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