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井上 唯 展
ギャラリー揺 シリーズ企画「移行」1 
井上唯展「いまここに存在することの不確かさ」(2010.2.23~3.7)を終えて

working 1

作品「(家型)」に入って展示作業中の井上唯さん

玄関
 1 (壊れかけの梯子) a broken ladder [蜜蝋 / bee wax] 
板間
2 (水面鏡) a pool[アルミ / aluminum]
3 (梯子) a ladder[金糸 / gold thread]
4 (下階段) steps[蜜蝋、水、和紙、スチレンボード、シナベニア合板 / 
bee wax, water, Japanese paper, board, wood]
和室
5 (家型) home[リネン、金糸、真鍮棒 / linen, gold thread, brass]

6 (上階段) steps[蜜蝋、和紙、スチレンボード / bee wax, Japanese paper, board]


朝の淡い空気、真昼の太陽光線、夕暮れの冷たい雨、と様々に移り変わる空間で「水面鏡」は、移行し続ける実像を屈折して映し出します。そこに居合わせた者が、不思議を見つけて、階段や梯子を使ってここではない何処かへ行ってみたくなれば、作品に繋がり、作家が設えた処に近づくのだと思います。

mizukagami

庭の緑が映り込む「(水面鏡)」

steps 1

蜜蝋に初挑戦! 会期中に何度もやり直し、上から水を乗せて完成の「(下階段)」

steps 2

ここではない何処かへ行く「(上階段)」

home

リネンと金糸の「(家型)」

home 2

一本の細い糸を針で編んでいくことで線が面になります。様々な形の多数の面を繋ぎながら編んでいくことで、家型の面が広がり、一続きの織りの面(側面と屋根面)と繋ぎ合せて立体の家型になります。果てしない時間経過を重ねて編み進める作業の中で、過去を振り返るように小さな糸端を見つけると、元は一本の細い糸だったスタート時点に意識が戻るような作品です。和室に浮かぶ家型は掴めない不安を包み込んで、時折、幻の夢より透明に「(家型)」は視線から消え去ります。

元住居空間のギャラリー揺は花が良く映り、展覧会中に草花を生けるのは私の楽しみの一つです。でも今回は、家型の作品を邪魔しない植物が見つからず、思い切って一輪の花もない会場を試みました。日常的に「必ず必要と思い込んでいたのに、実は不要」と気づく良い機会でした。今まで沢山の作品に邪魔していたことを、反省しています。

working 2

最終日まで針を手に編む作業が続きます。

以下、井上唯さんのコメントです。
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『なにかがそこにあることで、今まで意識にのぼってこなかったようなことにふと気付く瞬間がある。いまここにある世界が、目に見えるレベルでも見えないレベルでもどんどん変化しているということを思う。
 光や空気、風といった自然界の現象と、モノと、人とが、囁き合い、触れ合いながら変わり続けていくさまを見ていると、その変化のむこうに、私たちとは関係なく動いている世界の本質、ルールがあるように感じられる。そこでは、静かに、しかし確かに、こことは違う時間が流れ、そして全てが繋がっているのだと思う。
そうした空間の囁きに耳を澄まし、見えない世界の存在に思いを馳せる、感覚のスイッチがはいるような場をつくりたい。
輪郭も存在も曖昧で、あるようでないようで、でもやっぱりあるのかなと思うような、そんな気配や佇まいといった、カタチの外側にあるものを生み出したいと思う。
流動しつづける世界の一端を垣間見たい。』        井上 唯
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井上唯さんは、大阪産業大学 工学部 建築・環境デザイン学科の職場を今年の3月で退職して、4月からは作家一本の生活が始まるそうです。普通、制作が続けば疲れてくるのですが、「一時的に身体は疲れるけれど、もっと大きいスパンで捉えると、自分の身体から出した以上のものが、新たに入ってくるのを感じます。」と言われる井上さんの今後が楽しみです。


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03/11 21:57 | 展覧会
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