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宮本ルリ子展(2018.10.23~11.4)を終えて
宮本ルリ子展(2018.10.23~11.4)を終えて

当画廊で初めての宮本ルリ子展「日本と中国の協同制作 2018」

≪京を創る 黒谷 金戒光明寺≫(1998年)で宮本さんの作品「Time Less Rosary」を拝見。チラシに『3000年にこの珠を手にした方ご連絡下さい。』と記載されていたので、セラミックスの人工石ころ「珠」を夫と1個ずつ持ち帰りました。 黒谷の境内に設置された数珠の全形を思い浮かべながら、「珠」は当画廊の棚で文鎮として役立っています。あと980年余り先に『それらを再び一つにします。これは、現実と夢・幻想と真実が交錯する、時を超えた旅物語なのです。』ともチラシに記載されていました。20年も前の私の記憶が、今ここに蘇ってきました。

≪展示作品≫
1 「無題」     
2 「王墓」 数か所の古墳付近の土 | 秦始皇帝陵遺址付近の土
3 「空海」 高野山の土、小石 | 清龍時の土、灰
4 「京」 御所付近の土、植物 | 西安(長安)の土、灰
5 「日中戦争 第二次世界大戦」 広島・長崎の土、川砂、植物 | 南京の土、小石
6 「海」 海砂、海水、貝
7 「印章」 全ての収集、提供品を焼着付けた印章 富村陶芸村と信楽の陶器粉も含有

PA250022.jpg 展覧会場(昼間)

PA250024.jpg 展覧会場(夕方)

PA250049.jpg 展覧会場(夜間)

PA250057.jpg 作品「王墓」

PA250059.jpg 作品「空海」

PA210081.jpg 作品「京」

PA250064.jpg 作品「日中戦争 第二次世界大戦」

PA250065.jpg 作品「海」

PA250067.jpg 作品「無題」

PA250050.jpg 展覧会場 室内から庭を望む(夜間)

PA250013.jpg 作品「印章」 
 
PA280088.jpg 宮本ルリ子さん   

宮本ルリ子 略歴
1963 岡山県に生まれる
1985 大阪芸術大学工芸科卒業
1987 多摩美術大学大学院美術研究科終了
1987~89 青年海外協力隊参加(陶磁器隊員としてフィリピンのパンガシナン州立大学にて2年間活動)
1990 財団法人滋賀県陶芸の森 創作研究科 指導員(2002年主査)
2003年 財団法人滋賀県陶芸の森 退職 独立
個展、グループ展多数、国内外で活躍中

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京都新聞2018年10月27日朝刊(美術欄)掲載記事
宮本ルリ子展(揺=銀閣寺前町 4日まで 月休)日本と中国の協同制作で、両国各地の土や砂、海水などを信楽透土に焼き込み、見開きの本に見立てて歴史的なつながりや両国の関係を表現。下からの光でほのかに関連のモチーフが透けて見え、長い年月にわたる交流や蓄積が思われる。(加須屋明子・京都市立芸術大教授)

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ギャラリー揺 展を終えて

本展は掃き清められた庭に落ち葉が舞う、少しひんやりとした空気と静寂の中での展示となりました。午後5時近くになるとうす暗がりの中で、信楽透器がぼんやりと発光して、和の空間が作品を引き立ててくれました。

「日本と中国の協同制作」は2013年にアメリカ人のキャサリン・サンドナスさんと取り組んだ「日本とアメリカの協同制作」を発展したものとなりました。歴史的な場から収集した土などを信楽透土に焼き込み、歴史を通しての断片を共有した作品です。思い返せば、先の作品では2011年の東日本大震災が大きく影響していて、原子力は作品を構成する骨格の一つでもありました。

今回の作品を制作することになったきっかけは、2017年に中国西安から北に車で1時間程度行ったところにある富平陶芸村(富楽国際陶芸博物館群)から滞在制作依頼があったことです。ここは中国初の現代陶芸をテーマとする陶芸博物館で、私は建築予定の日本館に展示する作品制作のため行くことになりました。中国での協同制作を意識したのはこの依頼を受け入れた時からです。「日本館」ということもありますが、協同制作がもっと広がっても良いのではないかと感じたからです。富平は西安(長安)に近い場所ということもあり日本との歴史的な繋がりを考えました。それが「空海」「京」というテーマの作品になりました。また、秦始皇帝陵、兵馬俑坑が近くにあったことから、お互いの国の代表的なやきもの文化である兵馬俑と埴輪の「戦士」のイメージを使った作品が生まれました。

二つの国を考える時、未解決な部分があるからこそどうしても外せなかった場所が「南京」です。中国のアーティストとがっぷり四つに組んで制作できた訳ではないのですが、南京在住の現代陶芸作家の陸斌氏や李雨花氏の協力のもと彼らの学生たちが土の収集に協力をしてくれ完成させることができました。

富平でつくったものは全て寄贈しなくてはならなかったため、現地の土を素焼きして国内に持ち帰り、今回の展覧会用に再制作をしました。また、新たに「海」というタイトルで海水、海砂、貝を使った新作を加えています。現在の日中関係を見つめて海域をテーマとした作品です。

展示を見に来てくださった全盲の知人が作品を触って、その感想を伝えてくれました。『実は私の両親も幼いころ親に連れられて中国に住んでいて、そのころの話を聞いたことがありました。日本の侵略戦争は他人事でないだけに、日本と中国のことは考えずにそっとしておきたい気持ちがありました。宮本さんの繊細な陶の本に触れて私の心の結界が揺らぎ始めた気がしました。大切な作品に触らせていただき、本当にありがとうございました。』

前作時には福島いわき市在住の方が、海砂と花、貝といった提供物と共にメッセージを添えてくださっていました。そこには『復興途上のいわきの思いを、亡くなった方々の御霊と共に是非作品に移入してください。』とありました。そんな思いが今回の作品にも込められていればと願っていたので心に染みる言葉でした。

振り返ってみれば、この作品を構成する大きな骨格は「争い」と「共鳴」だったのではないかと思っています。「共鳴」という表現が適切であるかどうかはわかりませんが、「争い」が領域を侵す、侵されるといった分離感から生じるとしたら、共鳴には境界が揺らいでなくなっていくイメージがあります。「結界が揺らぐ」とは、自分を守るために周りと区別するその境が揺らぐことです。そして、それは個が開かれないと起こらないものではないのかと、ギャラリー揺での空間は内面を静寂に誘い、微妙な揺らぎをもたらすことのできる場であったと感じています。(宮本ルリ子)

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光を通す信楽透土を使った宮本さんの作品は、時間によって天候によって絶えず変化し続けて、見る者に何かを訴える強いメッセージを感じました。「日本と中国の歴史的な場の断片を共有することは、何を意味するのでしょうか。」と鑑賞者に問われた展覧会です。

歴史は私たちに何を教えてくれるのでしょうか。
歴史上には多くの失敗が登場します。失敗のたびに人間は何かを学び、修正してきました。それを未来に繋げるのが今の私たちの使命だと思います。

歴史学では史料を提示し、さらにその史料が信頼できるものなのかを判断します。現代の時事問題に対しても「この報道の根拠は何なのか」「その根拠は信頼できるのか」といった批判的な姿勢が大切です。例えば「尖閣諸島は文献的にも日本固有の領土である」という主張していますが、「それはいつの時代の、何という文献の情報で、それは誰によって書かれたのか」とか「近隣諸国に伝わる文献には何が書かれているのか」という発想を政治思想に関わらず、中立的に考えることが重要だそうです。

考える機会を与えられたこの展覧会をきっかけに、「知らなかったとか、無関心だった」で終わらせずに、今ここに展開しているこの状況を把握して、新しい認識を生み出したいものです。

宮本さんが当画廊を「争いの結界が揺らぐ」空間にできる場であると感じてくださったことを嬉しく思います。良い展覧会をありがとうございました。(三橋登美栄)


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11/14 15:08 | 展覧会
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