美術作家 三橋登美栄
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ギャラリー揺 川上大介展「approach to signs」(2009.9.29~10.4)を終えて
陶の展覧会が続きましたが、川上大介展は陶芸ではなく、 焼いてない粘土板に動物の足跡や落ち葉がついています。 ![]() 作品は玄関、板間、和室、庭の4ヵ所に粘土板3点と写真、山で収集したものの展示です。 玄関 カモシカの角、シカの角、パネル(コメント掲示) 板間 写真(朝の修学院の風景) 傾斜板上に粘土板3枚(シカ、イノシシの足跡) 写真(昼の岩倉の風景) 水平板上に粘土板3枚(シカ、イノシシ、タヌキの足跡) シカの角、トンビの羽根 畳の間 粘土板4枚(シカの足跡) 大文字山の夜の空間 暗い和室に懐中電灯一つ点灯 シカの角 音響(夜間、大文字山でイノシシの鼻息などを収録) 庭 シカの角 ![]() 以下は玄関のパネルに書き記された作家本人の文章です。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 粘土を背負い山を歩く。歩き出して20分もすれば、もう人の気配はない。 あたりを注意深く観察しながら、粘土を仕掛けるポイントを探す。 ここだというポイントを見つけたら、倒木を獣道に横切らせ、野生動物がちょうど足を下ろすであろう場所に粘土を仕掛ける。 半日落ち葉を煮詰めて作った液体を撒き、粘土やこの場所についた自分のにおいを消す。 すぐ近くから、こちらの様子を伺っている動物の気配に気づく。 気配同士がぶつかり合い、空気は緊張し私もひとつの生き物としてここに存在していることを実感する。 川上 大介 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 山の自然の空気に魅かれて、月に一度位は近くの山に入り季節の植物を写真撮影します。 もちろん昼間なので、めったに野生の動物には出合えません。今回の展覧会で夜行性動物の気配を体験しました。粘土板の足跡を注意深く見ることによって、シカ、イノシシ、タヌキには出合っていないのに、今までの記憶を手がかりに様々な想像を巡らせて、より深く闇夜に実体を探すことができました。そして、次は足跡ではなく本物を見てみたい気持ちになる展示でした。会期中は、和室を閉め切っているために山の臭いが籠もり、板間にはシカの糞があるために、雨の日は特に、山の自然の匂いが広がります。(臨場感を高めて効果的という意見もありました。) 現代社会で日常生活が営まれる中、息詰まる閉塞感からのがれる思いで自然界をテーマにした展覧会は多いのですが、表現の難しいテーマ「緊長した空間」への挑戦に共感しました。今後、粘土板のままの大胆な展示から次への展開を期待しています。 ![]() スポンサーサイト
11/04 21:35 | 展覧会 |