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衣川泰典展「スクラップブックのような絵画Ⅱ」(2015.6.9~21)を終えて
衣川泰典展「スクラップブックのような絵画Ⅱ」(2015.6.9~21)を終えて

室内に大作を含む平面作品19点、庭に本のように見開きできるArtist Bookを展示。
京都市内では、5年ぶりの個展です。

≪展示リスト≫
1 記憶のかけらー逆光   
2 page#3
3 page#1
4 記憶のかけらー兄弟
5 スクラップブックのような絵画#22
6 スクラップブックのような絵画#23
7 スクラップブックのような絵画#25
8 記憶のかけらー兄弟
9 記憶のかけらー森の輪郭
10 記憶のかけらー森の入口
11 記憶のかけらー森の朝
12 記憶のかけらー車窓
13 空を見上げる
14 記憶のかけらー海岸
15 記憶のかけらー湖
16 夜道を歩く少年
17 スクラップブックのような絵画#24
18 スクラップブックのような絵画#26
19 記憶のかけらー部屋
20 untitled#33

展覧会入口 展覧会入口

記憶のかけらー逆光1 「記憶のかけらー逆光」
記憶の世界への入口か出口か? それとも現実への出入口か?
トンネルの境目を出たり入ったり、留まってみたりしたいです。

展覧会場1 展覧会場1
屋内の青と庭の緑をつなぐ赤い絵画に眼が止まります。

page#3(左側)と page#1  「page#3」(左側)と「page#1」
キャンバス地にアクリル絵の具の絵画。

展覧会場2
展覧会場2
 
記憶のかけらー兄弟 記憶のかけらー兄弟
「記憶のかけらー兄弟」の2点

展覧会場3 展覧会場3

空を見上げる
「空を見上げる」 撮影された写真を元に制作された絵画。

展覧会場4 展覧会場4
大き過ぎると思える大作を、広い板間ではなく、狭い和室の畳の上に立て掛けた設置方法は、大胆で効果的です。

夜道を歩く少年 「夜道を歩く少年」
幼い頃の恐怖感や不安感は大人になってからもよみがえり、記憶の中で繰り返します。

スクラップブックのような絵画#24  「スクラップブックのような絵画#23」
記憶をテーマに、見たことがあるような風景が描かれています。
思い出の写真を一枚一枚丁寧に見るように観賞すると、見覚えのある風景に出会います。鑑賞者は自分の記憶を作者の記憶に重ね合わせて、風景を共有します。

記憶のかけらー部屋 「記憶のかけらー部屋」
愛用の品々が集まっている特別な空間は、空気までもが全てを記憶しています。

untitled #33 「untitleed#33」
写真のコラージュ作品を綴じ合わせたアーティスト・ブック。
めくる時の重い手応えから、記憶が伝わってきます。

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当画廊で開催した展覧会を記録に残したいと思い、2008年にブログを立ち上げて、写真入り文章をインターネットに公開した回数が200回を越えました。ブログは、展覧会・山歩き・旅行・日々の4種類ですが、全て私の中でしっかり繋がっています。時々読み返すと、今の私とは違う私を見つけることがあります。記録とは違う、過去の曖昧な記憶の世界は魅力的です。
今回の衣川泰典展のお蔭で、記憶から生まれる新しい創造の世界のかけらを拾いました。

これからの衣川さんの作品展開を楽しみにしています。どうぞご活躍ください。 (三橋登美栄)
                                 
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京都新聞2015年6月13日朝刊(美術欄)掲載記事  掲載写真は省略
「作品を通して分かち合う記憶」
衣川泰典展
京都を拠点とする若手作家(そろそろ中堅と呼ぶべきか)の衣川泰典が、京都市内では5年ぶりの個展を開催中だ。
 本展の作品は、彼が撮影した写真を元に構成した絵画である。描かれているのは、都市とそこを行きかう人々、公園で遊ぶ子どもたち、自動車で移動中に車窓から見た情景など。それらに共通するのは、ごく一般的な一場面だということ。作者のメッセージを込めるのではなく、誰にでもありがちな一瞬を不作為にちりばめている。
 たとえば、和室の奥に立てかけられた大作(画像)には、約40の場面が描かれている。それらは場所も日時もばらばらだが、見る側は何となく各場面を結び付けて物語を見つけ出そうとする。あるいは世間を俯瞰しているような気分になり、地上にある無数のエピソードを共感とともに分かち合う気持ちになる、作品は作家個人の記憶であると同時に、同時代の人々の共通的な記憶でもあり、その普遍性や日常をいとおしむ感覚が説得力となっているのだ。
 衣川は以前から同様の作品を発表していたが、旧作では印刷物のコラージュと色彩を併用していた。絵画に移行したのは約2年前。新作では、キャンバスの裏目を用いて絵具のにじみを生かしており、テーマと技術の相性が明らかに良い。作品の説得力が増したのはそのためだろう。
 なお、元イメージの写真をコラージュした本型の立体作品が屋外に展示されている。こちらも忘れずに鑑賞してほしい。(小吹隆文・美術ライター)

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最後に衣川さんからの文章を掲載させていただきます。

揺での個展の話を頂いたのが2年ぐらい前のことだったと思います。気付けば、展覧会の作品にはその2年の間に出会った様々な風景を描いていました。描かれた風景には京都で出会った風景が中心となりますが、様々な地域の風景も混在しています。初めて出会った知らない土地の風景でも、なぜか懐かしい気持ちを抱いたことを覚えています。このように感じる感覚には日本人としてのDNAに染み込んだ何かと日常に眼にする風景の中の普遍的なものとが共振した瞬間だったのかもしれません。
今展では絵画作品とスクラップブックの作品を展示し、絵画とアーティストブックにより現実的な空間との関係性を探る展覧会となり、今後の創作活動にも繫がることと思います。梅雨の季節で雨の日もありましたが、ご高覧頂けた皆様と、貴重な機会を頂けたギャラリーに感謝します。 (衣川泰典)

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06/21 22:52 | 展覧会
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