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鷲津民子・森口ゆたか 2人展を終えて
ギャラリー揺10周年記念シリーズ企画(2015.4.14~26)
RESONANCE2「ガラスの靴とはしばみの木」展(鷲津民子・森口ゆたか)を終えて

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心の痛みとその再生
人は、どのような環境、境遇にあっても、生まれてきた限り、生命の祝福を受けるべきだと考えます。

                                   鷲津民子 森口ゆたか
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グリム童話の「灰かぶり」は私達がよく知っている「シンデレラ姫」のお話です。
≪毎日、継母と姉たちにいじめられる灰かぶり。彼女はハシバミの小枝を亡くなった本当のお母さんのお墓にさして大泣きします。ほおをつたわる彼女の涙がその小枝に落ちると、その枝はみるみるうちに見事な大木に成長しました。 その後、灰かぶりが毎日3回その木の下で泣きながらお祈りをすると、そのたびにどこからか白い小鳥がやってきて彼女の願いをかなえてくれるようになったのです。こうして舞踏会に行くための素敵なドレスや黄金の靴も手にいれることができました。≫

展覧会場1
インスタレーション|森口ゆたか
「灰かぶり」からの引用文章「目玉を一つずつ、つつき出しました。」がプロジェクターからゆっくり映し出されて、静かに消えていきます。 

展覧会場2
「かかとを、少しきってごらん」
なにをしたって、おまえは、だめなんだ 撮影|鰺坂兼充
「なにをしたって、おまえは、だめなんだ」
ガラス玉 撮影|鰺坂兼充
無数のガラス玉が輝いています。淡い青磁色のガラス玉と、光を取りこんで美しい影を落とす蓄光ガラス玉が散らばっているのは、ガラスの靴を示唆しています。

和室展示1
インスタレーション|鷲津民子
石膏で作られたさまざまな形状の小立体は種子や植物がおかれています。

和室展示2

和室展示3 撮影|鰺坂兼充
グリム童話の「灰かぶり」には、ハシバミという植物が出てきます。このハシバミの若枝には、不幸な娘の運命を逆転させる大切な役割があります。ドイツの庭には、ニワトコの木と同じくらいハシバミの木が植えられ、親しまれてきました。ドイツだけではなく、ヨーロッパでは、8000年も前からハシバミの実(ヘーゼルナッツ)は栄養源として大切にされています。ハシバミは「知識・知恵」の象徴とされ、その枝には不思議な力があると信じられていました。古くから、Y字型をしたハシバミの枝は、水脈や鉱脈を掘り当てるための占い棒として用いられ、それはまた、財宝や泥棒、逃げた家畜を捜す時に、さらに旅人が道に迷った時にも使われました。泉に落ちたハシバミの実を食べると、詩的な霊感を授かるという伝承すらあります。またハシバミの枝は魔法の杖にもなりました。 神話では、ヘルメスはアポロから授かったこのハシバミの杖で、 人々の心や体の病を癒したといいます。

馴染みの薄い「榛の木」と思っていましたが、ヨーロッパ原産のハシバミの近縁種「ツノハシバミ」は日本にも生息していて、その実は栗のような味がするそうです。なるほど、双方の花はとてもよく似ています。
何処かでハシバミの小枝を手に入れて、挿し木をして成長したら、その枝で魔法が使えるお婆さんになれるかな? 私の成りたい将来像のひとつです。

鷲津さんと森口さん
鷲津さん(左)と森口さんはお互いを「ユッタン」「お姉ちゃん」と呼び合う仲良しコンビ。

この展覧会までに、何度も二人で話し合われ、共鳴のテーマを見つけ、準備、インスタレーションの設置をして開催期間を迎えられました。開催してしまえば早く感じるもので、あっという間に2週間は過ぎ最終日を迎えて、搬出作業が始まります。

搬出日
展覧会終了後、白いフィルムを剥がす作業中に、「灰かぶり」の恐い文章がクッキリ現れてきました。
この不思議な光景は、この展覧会に込められた意味をしっかり受け止めた、大切な瞬間でした。

鷲津さんも森口さんも、それぞれに様々な展覧会に向かって制作を続けられることと思います。
お二人の今後のご活躍を楽しみにしています。     (三橋登美栄)

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鷲津民子さんの記録映像を以下アドレスよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=ay3o95_ELbE&feature=youtu.be
(制作 鰺坂兼光)

森口ゆたかさんの記録映像を以下アドレスよりご覧ください。
http://yutakamoriguchi.info/portfolio/2015kyoto/index.html
(制作 鰺坂兼光)


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京都新聞2015年4月18日朝刊(美術欄)掲載記事

森口ゆたか・鷲津民子展
白い布の上で光るガラス玉、石こうの小さな立体上に置かれた種子や植物。グリム童話「灰かぶり姫」に着想したインスタレーション競作。(沢田眉香子・著述業)
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「シッタカブリアンの午睡」掲載記事(写真省略)

鷲津さんからDMを送っていただきそのデザインに心誘われながらも最終日のそれも滑り込みの来廊者になりました。
他のギャラリーで拝見していた森口さんのフリーフォームな表現法と、詩的な色合いの濃い展示にとても惹かれていましたので直接作家さんにお会いできたことがうれしかったです。
また鷲津さんの個展を見る度に心が穏やかに揺さぶられる作風にいつも感服させられていましたからこのお二人のコラボレーションにはひと際興味をかき立てられました。
「心の痛みとその再生」とあります。
以前に鷲津さんとお話しさせていただく機会に互いの親子関係=親子観についての或る種のシンパシーのようなものを(僕が勝手にですが…)感じとりながら常々、ひとにはいろんな事象が、それも予期せぬ形で関わってくるものだと改めて思い知らされました。
僕自身の出自も含めて「なさぬ仲」という関係性は他人から見ると様々な憶測と同情と憐憫をかいながらも当事者にどこまで添えるのかというと、やはり“そのひと”にしかわからない焦燥感、諦め、苛立ちといった感情の浮き沈みの中に他者が立ち入ることの難しさを感じます。
題材はグリム童話の「灰かぶり」です。実にタイムリーではありますが、エンターテイメントとしての「シンデレラ」は、それはそれとして、原作は限りなく残酷であり、子どもに読ませる本ではないとまで言わしめるほどに、これもまた「痛み」を強要する一種のハラスメントな内容になっています。未だにディズニーが原作であると思っておられる人もいるようです。
物語の中の様々な痛みの文言、フレーズがガラス戸に見えています。一面白い床にころがる大小のガラス玉の上に投射された文字が浮かんでは消えていきます。その痛みはやがて、いつか癒されるときが来てそんなこともあったと回想できる日が訪れるであろう、希望的観測も含めた効果が見てとれます。そしてガラス玉がその言葉を優しく緩和させてくれます。
隣の部屋ではさまざまな種子がこれもまたさまざまな形状の台座と共に、びっしりと敷き詰められています。
「灰かぶり」には「ハシバミ」という木が登場します。検索しますと、ハシバミについては相当な蘊蓄が詰まっていて、日本では馴染み薄いこの樹木が、ヨーロッパでは様々な意味を含んでいることがわかります。
さて、灰かぶりの中でもこのハシバミのおかげで娘の運命が逆転するという緩やかなそして“痛い”ジェットコースターストーリーの中で重要な役割を果たします。
鷲津さんは物語の中で見事な大木に育ったハシバミを種子にシンボライズされてオブジェを制作しました。
通常ですと庭や外光をふんだんに利用した展示がこのギャラリーの特徴ですが今回は趣を変えて暗室と陽の光の「陰陽」、「災厄と救済」、「祈りと欲」といった相反するテーマがスムーズにグラデーションされたとても繊細かつ知的な空間に反映されていました。   (Category : 現代美術シッタカぶり)

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最後の締めくくりはお二人の文章です。

Resonance2「ガラスの靴とはしばみの木」を終えて
今回はResonance(共鳴)というコラボレーション企画でしたので、
ふたりが何をどのように共鳴できるのか、何度も話し合いました。
そのなかで、展覧会のテーマとした「心の痛みとその再生」が生まれました。
ひとの心の痛みに対して、アートにはなにができるのか?を、私達ふたりも
自問自答しながら制作をしました。ご覧いただいた多くの方々から、様々な
ご感想をいただきました。それらの言葉を糧に、これからもお互いに制作を
続けてゆく所存です。お忙しいなか、お越しいただいた方々に、心よりお礼
申し上げます。    (鷲津 民子・森口 ゆたか)


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05/28 16:48 | 展覧会
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