美術作家 三橋登美栄
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ギャラリー揺シリーズ企画「在ルコト」その2
築山有城展―木が輝くとき―(2014.4.8~20)を終えて 日本の木は寒暖の差が厳しい気候風土によって強度に優れ、年数が経つほどに美しいツヤが出るという魅力があります。自然乾燥の材木は製材しても木の命が生きたままだそうです。床材や壁材として使うと、窓の外から差し込む光(紫外線)から自らを守ろうとしてツヤ(油)が浮いてきます。 一般的に、材木にしたときに「節がない」「ヒビが入らない」「くるわない」という木材が良質であると思いますが、築山さんはその常識を逆手にとり、節を使って作品を制作。庭は廃材の輪切りを大量に配置したインスタレーション展示です。 ![]() 展覧会場(撮影 片島なるみ) <展示作品リスト> 1 power point(2014) 角材h45×d45×w720mm 2 けものみち(2014) 角材 h1300×w314×d45mm 3 にぉい棒2(2014) 楠 h1205×w160×d160mm 4 最初の家(2014) 杉 色鉛筆 h100×w230×d220mm 5 サクラックス(2014) 楠 塗料 h100×w100×d850mm 6 panda woods(2014) 不明 h850×w290×d120mm 7 shooting star(2014) 額 h415×w490×d40mm 8 盤上の星(2013) 桂 h240×w405×d450mm 9 cosmic切断面(2014) 杉、桧、松、楠 ≪作家のコメント≫ 昨年実家を解体した時に出た梁の古材、造園業を営む弟から引き取った楠、スタジオの木工室に転がっていた廃材など。私はこれらを何か彫刻作品の材料になるかも知れないと思って所有していました。 ある時、日頃からお世話になっている材木屋さんから木の話をあれこれ教えていただき、年輪には冬目(冬は成長が遅く、その分組織が詰まって成長するので硬く色が濃い)と夏目(夏はよく成長し、組織との隙間が開いているので柔らかく薄い色をしている)があるということを知り、寝かしていた木材に対してあれこれ思念していたことが一気に消し飛んだのでした。 「どこかで生きていた樹木」 木材は単なる材料だが、それぞれ個性を持った木であるという当たり前のことに気付き、無知であったが為に私の視点は大きく変わります。打ち捨てられようとしていた木が最も輝いていた時はいつか?どんな場所に生え、どんな一生を送ったのか?もっと年輪を観察してみたい、もっと年輪を人に見せたいという思いに駆られて「cosmic切断面」を制作しました。自分の身体で木の硬さや重量を感じたい、そしてできるだけロスを少なくするために、手鋸を引き切断を繰り返しました。昭和初期に建てられた家をずっと見守っていた梁は、苗木だったであろう状態から100年以上の時を経て、いま京都のギャラリーに在るのです。 ![]() 作品「power point」 製材時に不要な箇所として切り落とされた節の強さや美しさに着目。 ![]() 作品「けものみち」 節の跡の窪みが連続するユーモラスな表現。 ![]() 作品「にぉい棒2」 材木店で10年くらいを置かれていた楠の四角柱材をノミと小刀で仕上げ。 ![]() 作品「最初の家」 ご実家解体の梁から再び現れた白い小さな家は、次世代の夢の雛型。 ![]() 作品「サクラックス」 2本は本物の枝で、左端は楠の角材を桜の枝に見えるように制作。 ![]() 和室展示 作品中央「盤上の星」 碁盤の目の上に印した九つの黒点を星といいます。星を刻み込んだ板上で新ゲームか新囲碁は? 作品右「shooting star」 キャンバスを星型に撃ち破った跡。夜間に庭から見ると障子に映る影は夜空に滲む星。 ![]() 作品「panda woods」 元は1本の木材を切断して天地逆に左横に設置した逆さ柱。 ![]() 庭展示(撮影 片島なるみ) 用途を終えたと思われる廃材を丁寧に手鋸で輪切りにして番号と日付を記入。庭の苔に意識が向くように設置すると、庭の植木や苔と共に、輪切りの木々は甦ります。 ![]() ギャラリー揺での築山有城さん(撮影 片島なるみ) 庭では楠の良い香りが漂い、来廊者からは「ストレートで爽やかな展覧会」という感想が多く聞かれました。築山さんはいろんな素材を用いて多彩な活動をされていますが、今後どのような木々との関わり方をされていくのか楽しみにしています。ご活躍を願っています。 スポンサーサイト
04/21 00:30 | 展覧会 |