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林勇気展 (2013.9.3~15)を終えて
ギャラリー揺 シリーズ企画「ズレ」Ⅱ その3
林勇気展 (2013.9.3~15)を終えて

9月1日の午後から雨足が強くなる最中に岡山泰士さん(mono.)の協力を得て搬入作業は行われました。
庭にモニター3台、裏庭への通路にipad1台、板間にモニター2台とipad1台、外光を遮断した和室にブルーレイとプロジェクターの設置が完了しました。

雨
搬入日に降る雨

入口
展覧会場入口

板間展示1
2008年のシリーズ企画「ズレ」展の時に林さんのアトリエ(四条大宮)からギャラリー揺までの道中で撮影された写真がモニターに、ギャラリー揺の室内外の写真がipadに映し出されます。

板間展示2
5年後、同じく作家のアトリエから揺までを撮影された写真がもう1台のモニターに映し出されます。
自動的にスライドショーで映し出されるのではなく、作家の親指と人差し指の指先が写真と一緒に写り込むことで、実際に横で写真を見せてもらっているような臨場感があります。画面の外まで作家の意図が広がり、動かない写真が動画に変わる瞬間が楽しいです。

庭展示1
揺の庭を撮影した写真を揺の庭で見ます。
撮影された場所でその写真を見ることは珍しいので、より丁寧に双方を見比べて観察します。

庭展示2

庭展示3

和室映像1
記録された膨大な量の写真データの細かい部分部分を手作業で切り抜き、つなぎ合わせ制作された映像作品です。

和室映像2
暗室の3面に映し出された映像は暗闇に浮かぶ幻想的な地図で、記憶の中で目印になる物を確認して目的地を目指します。でも老眼鏡が必要な中高年には確認し辛く、iPhonのマップ検索する時に似ていて、ルーペを使いたくなります。

和室映像3
何層にも重なる地図を飽きることなく眺めていると、天体の星空が広がる宇宙空間に見えます。
会場に流れる音(サウンド制作:PolarM)の効果は大きく異次元の世界に引き込まれます。
『米航空宇宙局(NASA)は9月12日、36年前に打ち上げられた探査機「ボイジャー1号」が人工物として初めて太陽系圏から脱出したと発表した』(CNN.co.jp 9月13日)のニュースをテレビで見ました。この探査機は地球の場所が書いてある地図や地球の音が録音されたレコードを積んでいるそうです。搭載された電池が切れる2020年までに宇宙人が拾って地球にデータが送られたらと、果てしない夢が広がります。

ipad
裏庭の通路の建物の影にipadを設置。
この場所を撮影した写真の上に林さんの地図が重なって右から左に流れて行くのを見ていると、現実の時間と空間の束縛を忘れさせてくれます。

会場風景
会場風景
林さんは11月にドイツで展覧会を開かれます。
今後の国内外での一層のご活躍を楽しみにしています。

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京都新聞2013年9月7日朝刊(美術欄)掲載記事
林勇気展
5年前に同画廊で個展を行った林が、当時使用した素材と、今回新たに収集した素材を組み合わせて映像作品を制作。室内と庭に点在する映像を通して、時を隔てた場所と記憶をつなごうと試みている。
(小吹隆文・美術ライター)
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最後に林さんの文章で締め括らせて頂きます。

「展覧会を終えて」
2013年に撮影した写真と5年前に撮影した写真で映像を制作しました。

展覧会の搬入の日は大雨でした。数日後の在廊日は太陽の日差しが暖かでした。
路上の変化も庭の植物の成長も、天候の変化も、移りゆく時間を思わせます。
移りゆく時間は小さな輝きを放つこともあれば、
時にどうしようもない気分にさせられることもあります。

だからこそ「今ここ」を記録したいという想い、欲望にも似た想いがあって、
写真や映像を撮影したりするのではないかと思っています。

そのようにして撮影された記録と記憶の像は画面の向こう側に無数に存在して、閲覧され、共有されます。

そんな時代と世界をぼくらは生きています。

5年間の時間と場をつなぐための、奥行きのある、夜空のような、俯瞰した夜景のような、地図も。
プリントアウトされた写真を重ねていく行為と、写真のてざわりと、重なった写真の厚みと重さも。
その場とその場で撮影された写真と重なった地図も。
撮影された場所の数だけ、その場と撮影された写真と地図を重ねる、という可能性の広がりも。
移りゆく時間と、画面の向こう側の共有された無数の記録と記憶の中に存在していると、
会期中に考えていました。

そのことを忘れないでいようと思います。


おこしくださった皆様、ギャラリー揺さん、Polar Mさん、mono.の岡山泰士さん、
関係してくださった皆様に心より感謝致します。

林勇気

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09/25 21:56 | 展覧会
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