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小寺絵里展(2013.5.7~19)を終えて
ギャラリー揺 シリーズ企画「ズレ」Ⅱ その2
小寺絵里展(2013.5.7~19)を終えて

5年ぶりの個展は、忙しい子育て真最中に作家生活のブランクを乗り越えて開催されました。
描き溜められた平面作品11点と立体作品7点の展示作品は、小寺さんの愛娘、2歳のひかりちゃんを主人公に展開します。

ワクワク
作品「ワクワク」
ひかりちゃんの世界は、おもちゃのおじさんも新幹線も全て本物に置きかえられた小人の国のシンデレラ姫のようです。

マンガ
作品「ひいおばあちゃんへのレポート」
マンガは愛情溢れる育児日記です。

展覧会場
展覧会場
前回は、床下に凹形の砂の造形でしたが、今回は床の上に盛り上がった凸形のインスタレーションです。

magikal system
作品「magical system」
夕陽が差し込む頃は、陰影の魔法がかかって美しい影が現れます。

かんたんなまhぽう
作品「かんたんなまほう」
ひかりちゃんは人形に変身し、縫いぐるみのクマさん達と一緒にお気に入りのダンボールに入ります。本物の犬は魔法の国に仲間入りしたくて慌てています。

ドキドキ
作品「ドキドキ」
目の高さをシルバニアファミリーに合わせると魔法のスイッチが入り、ひかりちゃんの大きな手が入り込んでもそこはみんな一緒に遊べる夢の国。

おてて
作品「おてて」 
ひかりちゃんとお父さんとお母さんの3つの手が掴むものは、、、

ひらりのほうへ
作品「ひかりのほうへ」
ひかりちゃんの頭の中はまほうがいっぱい。

野生のまなざし
作品「野性のまなざし」

コテラリウム
作品「コテラリウム」

よあけ
作品「よあけ」
太陽光線を受ける南側の障子は山の夜明けの明るさや暖かさを表現。

わたしはどこ
作品「わたしはどこ?」(部分)
相手から見えないようにウチワに隠れます。

ちょっきん
作品「ちょっきん」
小寺さんの出産時を線書きした作品は、大切な命が誕生するドラマの筋書き。

光に垂直に進め
作品「光に垂直に進め」
月の光に対して垂直に飛行する習性の蛾は、現代の夜の灯りに惑わされて方向を誤って飛びます。

鉱物会議
作品「鉱物会議」(部分)
庭の木々が水槽の水に溶け込み、馬の前には草原が広がります。

庭の新緑
新緑の中に魔法の世界が違和感なく点在します。

コテラリウム アクア1
作品「コテラリウム アクア」

コテラリウム アクア2
作品「コテラリウム アクア」

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京都新聞2013年5月11日朝刊(美術欄)記載記事
小寺絵里展
育児のため活動を休止していた小寺が、5年ぶりの個展を開催。子どもとの日常をテーマにした絵画や漫画、水槽に鉱物などを配したオブジェを出品。  (小吹隆文・美術ライター)


最後に小寺さんのアーティストステイトメントで締め括らせて頂きます。
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私にとって今回は5年ぶりの展示です。
2008年の「ズレ」展のメンバーでもう一度企画展をしたいという内容で、オーナーの三橋さんご夫妻から頂いた手紙のなかにこのような一文がありました。
「5年という歳月は短いようで長い。受け止め方は個人様々でしょうが、いうまでもなく去年の東日本大震災を始め日本も世界も大きく揺れ動いています。これから先どうなるのかまったくわかりません。この5年間でみなさんの生活やアートについての意識にどんなズレが生じたのか、変わらず持ち続けているものは何か。」
この手紙を受け取ったとき、私は0歳児である娘の育児にかかりきりで制作から遠く離れていました。
ほんとに遠く。
だから自分に何がつくれるか全くわかりませんでした。でも自分の環境がすごく変わったことにだけは自信があったので、自分に何がつくれるか知りたいと思いました。三橋さんからの手紙の問いには、自分の環境の変化以外に震災のことは避けてとおれないなと思いました。
そんな時、ふと目にしたあるインタビュー記事にとても感銘を受けましたので、ここに一部を抜粋して書かせていただきたいと思います。お話しされているのは東京子ども図書館理事長の松岡享子さんという絵本や童話の創作や翻訳などを多数されている方です。
「私は被災地だから、被災者だから特別の本がいるとは思いません。悲しい体験をした人に、同じようなかなしみを描いた本が必ずしも助けになるとは思えないのです。人に力や励ましを与える本は、いつの場合も変わらないと思います。親を失った子どもには、同じ境遇にいる子どもの悲しみを描いた物語より、両親がいて、互いに愛し合って暮らしている温かい家族を描いた本の方が、むしろ慰めと安心感を与えるのではないでしょうか。本には、現実を補完する働きがありますから。現実の世界は、どうしても限られた小さなものになってしまうものですが、それを想像によって乗り越えさせてくれるのが物語や絵本です。子どもはもともと想像力をもっていますけれど、それを働かせるためには、なんらかの刺激が必要です。本はその役割を果たしてくれます。日常の生活とは別に、もうひとつ、自由な世界をもつことが、生きていく上で一番力になると思います。」 松岡さんの言われていることは、本に限らず絵画や美術にもいえることだと思います。想像する力をたくましくしていきたいです。
この5月に2歳になったばかりの娘は、自分でできることがたくさん増えてきて、親としては驚かされっぱなしですが、そこはまだまだ親のすることには及びません。シールを台紙からはがすのも、お菓子の袋をあけるのも手伝ってやります。自分に出来ないことをさっとやってのける母ちゃんは彼女にとってまだまだすごい存在のはず。わたしのすることは、きっと奇跡か魔法のように彼女の目に映っているかもしれません。ジャムのふたを開けるのも、シャボン玉をフーッとたくさん飛ばすのも、シャツのボタンをとめるのも。やがてこの尊敬のまなざしもシャボン玉のように消えてなくなることも知ってはいるのですが、彼女には「いつかおおきくなったら母ちゃんみたいなまほうを使えるようになるんだ」というくらいの大きな希望を持って生きていってほしいと願っています。そして私もしばらくは「母ちゃんはかんたんなまほうくらいなら使えるんやで」という顔を娘の前ではしていようと思います。 (小寺絵里)

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05/22 00:32 | 展覧会
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