美術作家 三橋登美栄
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林 康夫 展(2012.11.20~12.2)を終えて
2005年秋にギャラリー揺を開廊して早や8年目に入り、丁度100回目に林康夫展を開催する事ができて、とても嬉しく思っています。 ![]() 展示作品 1 寓舎 ‘12-2 2 小立体 3 寓舎 緑韻C 4 寓舎 緑韻 12-2 5 陶板 斜と正面A(黒) 6 陶板 斜と正面B(白) 7 陶板 アプローチ 8 陶板 斜と正面D(赤) 9 寓舎 影 10 寓舎 ‘11-余話 11 陶板 斜と正面C(緑) 12 寓舎 緑韻B 13 陶板 コンポジション 14 寓舎 緑韻 ‘12-1 15 寓舎 風韻 16 寓舎 波形の如く6(1985) 17 寓舎 方韻 ![]() 寓舎と名付けられた作品は、家型の立方体の側面に引かれた直線や曲線によって、より立体的な奥行きが複雑に現れます。中学の数学で習った図形の補助線のようにも見え、ドラえもんの「どこでもドア」のように異次元の別世界に迷い込む不思議な宇宙が広がります。作品写真を観ると、平面に置き換えられるための錯覚から凹凸を逆に感じることが起き、不可能な立体を空想して驚きます。大きな寓舎の屋根に当たる部分は丸みを帯びた蓋になっています。その蓋を開けると寓舎の魔法は解けて、作品の手びねり成形の技術の精巧さを大発見します。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 以下は、京都新聞(2012年11月24日朝刊)美術欄 / ギャラリーに掲載された記事です。 前衛陶芸の先駆者 描く現代の空気 林康夫展 林康夫は、戦後いち早く前衛陶芸を志した在野グループ「四耕会」(1947~56年)の創立メンバー。西洋の近代美術から刺激を受け、以後半世紀以上、陶による立体作品を制作してきた。作品は50年にフランスのチェルヌスキー美術館での「現代日本陶芸展」で高い評価を得たのを皮切りに、国内のみならず海外で展覧会を重ね、四つの国際展でグランプリを受賞するなど受賞歴も多い。 直線と円弧で構成される「直弧文」からインスパイアされた、曲線とフラットな面、シャープな角による立体構成。黒い化粧土で覆われた立体の上に、マスキングを用いた直線や色彩の面、グラデーションを描いて3次元の錯視をもたらす作品が多い。これは林が戦時中、特攻隊で夜間飛行中に体験した幻視がもとになっているという。見る者に不思議なビジョンをもたらす作品は、フランスでオペラの舞台美術に用いられ、ドイツでは「数学とセラミック展」という展覧会が開かれている。 今回の出品は、長年続けてきた「寓舎」シリーズ。新作に切り込みが黒々と口を開け、空洞たるやきものの内部をうかがわせる作品、あるいは壁面を抜き、素通しにした内部に立体が浮かび上がる作品が登場した。現代を「混沌とした時代」と語る林。時代の不気味な空気と、それを突き抜けてきた林の創作のエネルギーの両方が作品の中に見える。 (沢田眉香子・著述業) スポンサーサイト
12/18 19:32 | 展覧会 |