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望月重宏漆芸展(2012.5.8~13)を終えて
望月重宏漆芸展(2012.5.8~13)を終えて

アートライフみつはしで望月重延・乾漆展、ギャラリー揺で望月重宏・漆芸展を開催することになりました。2会場でお父様とご子息様、お2人の漆芸(※1)共演です。

望月重宏氏の展示作品
板間にレスポールギター1点、かんざし17点、コースターとトレー数点
和室にコースターとトレーを多数点

ギターと庭
新緑の庭を背景に直射日光を避けて、世界で一本のフルカスタムメイドギター”No 07GR001”が会場を引き締めています。このレスポールギターのトップはハードロックメープル、ボディーはマホガニー、指盤はローズウッド、と選び抜かれた木材を用い、2年半以上の歳月をかけて完成された楽器で、ミュージシャンに演奏されたことがあるそうです。

ギター螺鈿
「興於詩 立於禮 成於楽」(シニオコリ レイニタチ ガクニナル)は孔子の言葉で、望月重宏さんのお母様の書を螺鈿細工(※2)でボディーに刻み込まれています。その意味は「人間の教養は詩によって震い立ち、礼によって安定し、“音楽”によって完成する。」だそうです。
ポジションマークにも螺鈿細工が輝いています。

ギターコントロールノブ
黒漆の上に桜、菊、牡丹、鳥などの蒔絵(※3)が重厚に輝き、コントロールノブの細部にわたるまで緻密な漆芸が施されているのに目を見張ります。

コースター トレー
コースター、トレー
MDF(medium density fiberboard)に黒漆仕上げと、白ウレタン仕上げのシンプルなトレーやコースターは、自由なアイディアとアレンジとでアート作品を使えば、暮らしが華やぎます。

展示風景
展示風景

かんざし展示
黒漆に蒔絵、白ウレタンに蒔絵のかんざしは新しい伝統美で、和装はもちろん洋装にも似合いそうです。

かんざし流水文
かんざしの部分 
黒漆に流水文の蒔絵はモダンです。

和室展示
和室展示風景

望月重宏氏
ミュージシャンにも見える望月重宏さんは、漆工芸界重鎮の望月重延氏に師事し、漆芸制作活動をしながら、株式会社プライマリースタイル(※4)の代表でチーフデザイナーでもあります。
今後も、更に新しいデザインを考案し、日本の漆芸を世界に広げてご活躍されることを楽しみにしています。
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京都新聞2012年5月12日朝刊(美術欄)掲載記事
望月重宏展
漆を軸にさまざまなマテリアルを駆使して、伝統工芸を模索している。華麗な蒔絵(まきえ)を施したエレキギターや、漆とウレタンを併用したかんざし、ミニマルなデザインの皿などを出品。(美術ライター 小吹隆文)
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(※1) 漆
漆はその英語名を「Japan」と表すように日本伝統工芸の代表格として古くから世界に認められてきました。この呼吸する自然の素材は、堅牢にして優美、日用と芸術性の両面を兼ね備え、使う毎に色合いを深めると云う変容の美をも有する他に見ない特有な素材として親しまれています。漆は強度の高い接着剤であると同時に器体を保護する堅牢な塗料として縄文、弥生時代からすでに様々な用途に使われていました。漆黒と黄金の美意識、それを支える多くの技法は様々な変容を遂げながら現在に引き継がれています。  
(※2) 螺鈿
象嵌といわれる金属・陶磁・木材などの表面に金・銀・貝などをはめ込む技法として知られる「螺鈿」には一般的に夜光貝、蝶貝、あわび貝などの殻の内側部分が用いられています。裏地塗りの色が表に出るため表面の七色の光沢には様々な基準色を表現する事が出来ます。漆芸には「埋め込み・押し込み・掘り込み」と呼ばれる技法があり、いずれも卓越した技術が必要とされています。貝殻と云う自然の産物を用いるため、ふたつとして同じ輝きのない貴重な素材として、古来から様々な装飾技法として使用され細密な世界観を表現してきました。
(※3) 蒔絵
日本独自の漆芸技術「蒔絵」は漆の接着力を利用し金粉・銀粉などを蒔く時で金銀模様を施す技法です。その幅広い表現方法は鎌倉時代から室町時代に掛けての200年あまりで確立され漆の持つ美しさを一層豊かなものにし、後に「漆」が「日本の美意識」として世界に認められる大きな一因を為しました。
(※4) PRIMARY STYLE(プライマリースタイル)
漆を表現の軸とし、様々なマテリアルと積極的に結びついていくことにより、伝統工芸の新しいスタイルを提示しています。また、独自に培ってきたノウハウにより、次代のプロダクト製品の企画・開発・制作を行い、ひとつのプロジェクトを、ムーブメントへと繋げていく試みを続けています。

以上、※1~4の注釈は(株)PRIMARY STYLEの紹介文章から引用させて頂きました。

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05/14 18:21 | 展覧会
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