美術作家 三橋登美栄
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ギャラリー揺 シリーズ企画「still expecting」1
坂井 直樹 展(20112.3.13~25)を終えて 今年最初の展覧会で、シリーズ企画のトップバッターは坂井直樹氏です。 植物の好きな私は、展覧会の初日に、作家さんにご意向を伺いながら、作品に邪魔をしないように会場に生の花を生けることを楽しみにしていました。でも今回は違います。 坂井さんが花材(ミモザ、レースフラワー、バラ、カーネーション、バラの実など) を準備され、ご自身の手で花器作品に生けられました。 鉄の作品に、華やかで明るい春の命が宿ります。 ![]() 作品「湯のこもるカタチ」 作品「鐡の壁」 黒い鉄瓶に生けられた真紅のバラが玄関でお出迎え。 ![]() 室内展示 31点の鉄の作品が展示されている空間は、静謐な空気が流れるお茶室にも似た緊張感が漂っています。 ![]() 作品「鐡の箱花器」 普通、花器の上部に花を生けますが、この花器は、鉄の箱の中に花材を挿し、花は囲まれた空気に大切に包まれています。 ![]() 作品「それぞれの風景」 平面に押しピンで留まる軽い作品で、来廊者は「鉄なのですか!」と驚かれます。 ![]() 作品「鐡と真鍮の花器」 真鍮部分に水を入れますので、水は腐りにくく花が長持ちします。 ![]() 作品「steel≒still」 ヨーロッパの西洋建築の室内にもよく似合いそうなモダンなデザインです。 ![]() 作品「湯のこもるカタチ」 お茶席で使ってみたい鉄瓶ですが、アイディア次第で様々に使って楽しめます。 ![]() 作品「鐡の箱花器」 ![]() 作品「steel≒still」 オブジェですか、ドライフラワーを挿せば花器にもなります。 ![]() 作品「鐡と真鍮の花器」 軒先のスダレ掛けにピッタリ合います。 ![]() 作品「それぞれの風景」 会期中に雨に濡れて美しい錆色が増しました。 ![]() 作品「それぞれの風景」 ![]() 作品「それぞれの風景」 来廊者から「女性の作家さんかと思いました。」と何度か耳にしました。 一見、そのように感じる方もおられますが、それは確かな技術に裏付けられた繊細な作品から来る印象と花の力です。花は女性を表現し、鉄の形象は男性の深い創造力から生み出されたと思います。 小さくても生の花の力は大きくて、時には作品を脇役に、花が主役を演じるように見えることがあります。 今回は、鉄作品も生け花も坂井さんの作品なので2人主役の展覧会で2倍楽しみました。坂井さんの今後のますますのご活躍を楽しみにしています。 最後は、坂井さんの文章で締め括らせて頂きます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 鉄の持つイメージ、「重い・硬い・錆びる」。デメリットとして捉えられがちな特性を、カタチに変化させる事でメリットへと変わっていく。そんな想いと作品を今回のテーマである「still expecting」と結びつけて表現した。 鉄を赤く熱し、瞬間的にカタチにする。また、金槌を何万回と振りかざし思いのカタチに近づける。 そして、錆を着ける… 「鉄」という素材はいずれ土に還っていく。そんな自然のサイクルに僅かではあるが関われる事を嬉しく思う。 「揺」の空間には幾つものカギがある。一面のガラス、白い空間、和の空気。そして、外観との融和。 程よい緊張感をもたらしてくれるこの空間を極力崩さず、「still」の意味合いを意識しながら演出させていただいた。自分の作品群も、甚だ自信は無いのだか、穂のかに緊張感を汲み取り「still」という役目を担ってくれたのではないだろうかと感じる。 (坂井 直樹) スポンサーサイト
03/25 22:43 | 展覧会 |