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北中幸司『銅版スケッチ』展 (2022.6.7~19)を終えて
北中幸司『銅版スケッチ』展 (2022.6.7~19)を終えて
― 草木の 息する あいだに ―

北中幸司氏の個展は京都では9年ぶり、東京のGallery SU(東京)では3回開催されています。そして幣ギャラリーでは、今回初めて開催して頂きました。
梅雨入りした影響で雨や曇りの日が多いかと気がかりでしたが、晴れ間がのぞく日もあり心配には及びませんでした。展覧会場のガラス戸を全て開け放ち、風や光を室内に取り込んだ中で、落ち着いて丁寧に作品観賞して頂けるように努めました。庭の樹々の緑を背景に、制作者の緻密なスケッチ表現を辿って自然の偉大さに出会えた気持ちになりました。

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展覧会場入り口

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作品 「梅の実」

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展覧会場板間

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作品「樹幹」

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作品「森の風景」

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展覧会場板間

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作品「木群」

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展覧会場板間

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展覧会場板間

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展覧会場畳間


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作品「大風のあと」

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作品「望景」

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展覧会場畳間

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作品「将棋を指す万里」

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展覧会場畳間

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展覧会場畳間

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「Gallery SUから、この展覧会のお知らせを頂いて観に来ました。」と、何人かの来廊者から伺った時、私には遠い東京なのに近くに感じられて嬉しかったです。
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Gallery SU(和朗フラット四号館)

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【銅版画の制作工程(ソフトグランド・エッチング)】

1. 銅板の四辺をやすりで削り、表面をペーパーで磨く。
2. ウォーマーで銅板をあたためながら、ローラーを使ってグランド(防蝕剤)を塗る。
3. 銅板を台紙に貼る。その上に薄紙をかぶせて、テープで固定する。
4. 薄紙の上から鉛筆で絵を描く。
5. 描き終わると、薄紙を外す。描いた部分は圧がかかって、銅板の表面のグランドがはがれている。
6. 銅版を腐蝕液に浸ける。グランドがはがれ銅の表面が見えている部分が腐蝕されて凹部になる。
7. 薄くしたい部分は、液体のグランドを筆につけて塗る。塗った部分はそれ以上腐蝕されない。
8. 腐蝕液に浸ける→グランドで止める、の工程を3回くらい行う。腐蝕の時間が長いほど凹部が深くなる。
9. すべての腐蝕が終わると、表面のグランドを薬品で洗い落とす。原版の完成。
10. インクをゴムべらなどで、銅版の凹部にすり込むようにして、全体につける。
11. 余分なインクを新聞紙や布でふきとる。
12.プレス機のベッドプレートに銅版を置き、あらかじめ湿らせた紙をのせて、最後にフェルトをかぶせる。
13.プレス機のハンドルを回すとベッドプレートが水平に動き、2本のローラーの間を通過する。
14.このとき銅版と紙がプレスされ、銅版の凹部にたまったインクが紙に写しとられる。凹部が深いほど濃く写る。
15.紙を乾かせば、銅版画の完成。 (説明 北中幸司)

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紫陽花をスケッチされている北中幸司氏

≪北中幸司 プロフィール≫
1969 大阪府に生まれる 京都教育大学特修美術科にて彫塑を学ぶ
1993~2003 彫刻工房『吉田アトリエ』(大阪)にてレリーフ・彫刻などの仕事に携わる
2003 北中幸司『植物のスケッチ』展 ギャラリーテラ(京都)
2007~ 銅版画の制作を始める
2011、2013 北中幸司『銅版スケッチ』展 上門前の家(京都)
2016~2021 北中幸司銅版画展 Gallery SU(東京)
現在、大阪府高槻市に在住

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≪ 展覧会を終えて ≫

“ 銅版をスケッチブックのように持ち歩いて、木や草花を写生する。”
それを部屋に持ち帰って、下描き➞本絵のように進めるのではなく、現地で描いたスケッチそのままを腐蝕して銅版画に仕上がることに、多くの方が驚かれていました。『銅版スケッチ』は、私が試行錯誤ののちに辿りついた技法であり、ここには私が制作で大事にしている考え方や思いが詰まっています。
私は自分の中から絵を生み出してゆけるタイプの画家ではありません。目の前に何か描く対象を必要としていて、それが自然のものであればなおよく、描きたい対象の多くは戸外にあります。揺れ、移ろい、流れていくもの。自然のなかに身を置いて、生きている花や草、木々を描くのが好きなのです。
道の辺に花が咲いているのを、ふと立ち止まり、身をかがめて見入るような気持ちで、『銅版スケッチ』の作品を覗いていただけたなら幸いです。御観覧いただいた方々にはあらためて感謝申し上げます。(北中幸司)

展示作品の印象は「濃淡が美しく、色が見えてきます。」「何度観ても見飽きないです。」「儚さと潔さ、花弁の鮮やかさが好きです。」「外国の詩集本の挿絵に似合いそうな、雰囲気のある作品ですね。」などの感想を鑑賞者から頂きました。手書きの銅版画制作工程を拝見していると、雁皮紙の上から硬い鉛筆でスケッチした線がそのまま銅版画に仕上がる緊張感が伝わってきます。その作品の細部を覗き込むと、樹々の息吹が伝わる自然に包まれているような幸せを感じました。
素晴らしい展覧会と新しい出会いをありがとうございました。(揺 三橋登美栄)



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06/23 19:19 | 展覧会
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