美術作家 三橋登美栄
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川瀬理央・下村一真展(2021.11.30~12.12)を終えて
京都文化博物館で開催された工芸美術・創工会支援企画 新進作家5人展(2018年)で、川瀬理央氏の作品を初めて拝見し、ご本人にお声かけさせて頂きました。その後、当時京都陶磁器会館学芸員の下村一真氏が川瀬理央陶展(2019年)を担当、その展覧会を拝見した折に、弊ギャラリーでのお二人の展覧会案がまとまり、今回の「うつわをかりて」展を開催させて頂くことになりました。 …………………………………………………………………………… ーうつわをかりてー 繁茂する樹木のような繊細な造形を生み出す川瀬、火色など薪窯焼成で生じる表情を作品にからめ取る下村、2人とも磁土を使い、しばしば「器形」を用います。川瀬にとって器とは作品の主題である「時間」と深く関わるもの、下村は窯変の「キャンバス」として便利な造形と捉えています。それぞれの磁と器とのかかわりをご高覧くださいませ。(下村一真) …………………………………………………………………………… ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 川瀬さんの白い作品「刻」は呼吸している樹木のようで成長過程の時間が透過して見えます。庭の照葉の緑に、秋の紅葉と黄葉のみぎり、庭と室内の区切りは消え去り、美しく溶け込んで作品と自然が一体化して繋がっています。 ![]() 作品の説明をされる川瀬理央氏 川瀬さんは磁土を使って、太さの違う小さな紐を作り、樹木を表現するのに下から積み上げて形作られます。その「ひねり」のような技法を、川瀬さんは「ちねり」と言われます。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 下村さんは磁土(天草陶石100%)を使って、童仙房跡の白い丸を取り囲む赤い焼き色に心を注がれ、鑑賞者は淡い火色の緊張感と滲みの美しさに魅かれます。赤い焼き模様や陶肌を間近で丁寧に鑑賞することで初めて気付く発見に息を呑みます。(※童仙房とは、焼成時に作品の底に敷き、くっつき止めとして使用するものと伺いました。) ![]() ![]() ![]() 作品の説明をされる下村一真氏 ![]() ![]() ………………………………………………………………………………………. 《小吹隆文 アートのこぶ〆34》 川瀬さんの作品は樹木が細かい枝をびっしり張り巡らしているようにも観えますし、見ようによっては盆栽のようにも観えます。巨大な樹木のミニチュアのようにも観えます。盆栽というのは、元々大自然のミニチュアとして作られているものなので、そういうものかもしれません。樹木をモチーフにしながらも形としては、あくまでも器の形を取っているのがこの方の特徴で、磁土を使った作品です。非常に細かい枝が張り巡らされているので、これは運搬する時にものすごく気を遣うだろうなと思います。 下村さんも磁土を使った焼物です。一見すると壺とか花器とかいう、非常にオーソドックスな器という感じで、オレンジ色の火色がついています。これは、窯の中に焼物を並べて焼成中の最後で色がつくというものです。 「うつわをかりて」というタイトルが意味深で、川瀬さんは、見た目には特異な作品を作っているのですが、あくまで器の形を借りています。下村さんはオーソドックスな器に観えるのだけれど、器の表面を一種のキャンバスに見立てて、絵を描いているわけではないけれど、火色のイメージを作り出すために、器という形を使っているということです。 (12/02(木)のリポート書き起こし要約 三橋登美栄) ……………………………………………………………………………………………. 展示を終えて 樹木をモチーフに器型作品を制作しています。樹木には幹のうねりや枝ぶりに、器には作り手、使い手の重ねた時間が刻まれています。「今」に至るまでの過程に魅力を感じて形にしています。 揺の空間は日によって、時間によって変わる他にないギャラリー空間、そのお陰で作品のさまざまな姿を見られ、楽しくもありながら難しさも感じた2週間でした。 今回は週末だけとはいえ、久しぶりに長く在廊することができ、変わっていく空間と作品、又ご来場頂いた方々のお陰で豊かな時間を過ごすことができました。 瞬間瞬間に変わっていく作品の表情を見る中で、新たな可能性が見えてきたので、この時間を次に繋げていきたいと思います。ありがとうございました。(川瀬理央) ……………………………………………………………………………………………. 陽の光や庭の草木が刻々とうつろうギャラリー揺さんでの2週間は、とても居心地の良いひとときでした。 今回の川瀬さんとの2人展にあたり色々思案を重ねた結果、私も器形に絞り、「うつわをかりて」というサブタイトルにしよう、という考えに至りました。私は「磁土を薪窯で焼き締めて火色などの表情をうつし取ること」を目指して制作しており、変な物言いですが、器を作りたくて器を作っているわけではありません。そういう意味で、川瀬さんも私も器という形を借りて表現しているのです。 そういえば今年初めて、作家さんの徳利を買って使い、植木屋のアルバイトで石を据えるお手伝いをしました。たぶんそのせいで、今まで鋳込み成形だった徳利を轆轤で挽き、畳の間の壺の配置は庭石風でした。これからの制作も何に影響されるか分かりませんが、心地よく揺らぎながら精進したいと思います。 様々な形でお世話になりました皆様に厚く御礼申し上げます。(下村一真) ……………………………………………………………………………………………. 《付録》 下村さんは、奈良県宇陀郡御杖村にある薪窯で制作をされています。そのお話を伺いながら窯焚きの動画を拝見しました。窯の焚口や煙突から飛び出す炎のエネルギーにワクワクしました。[ https://youtu.be/GDsdZWODgXc ]より窯焚き動画を閲覧頂けます。 若いお二人の今後のご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。(ギャラリー揺 三橋登美栄) スポンサーサイト
12/18 13:58 | 展覧会 |