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山添 潤 彫刻展(2021.11.9~21)を終えて
山添 潤 彫刻展(2021.11.9~21)を終えて

ーきざみもの 2ー
石で円筒形の彫刻をつくる ハンマーと平ノミでひたすらきざんでゆく
石のもつ膨大な時間の上に私が関ったわずかな時間を重ね合わす
きざまれたノミ跡の内側に確かにある存在を感じながら (山添 潤)
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2011年に弊ギャラリーで1回目の山添潤展を開催、今回は10年ぶり2回目の山添潤展です。玄関にドローイング作品1点。板間床に黒御影石作品63点、白大理石作品10点、板間棚に赤大理石作品10点、板間壁面にドローイング作品5点。畳間床に黒御影石作品28点、畳間壁面にドローイング作品3点。庭に白大理石作品1点。 出展作品総数は120点です。
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搬入日(11月8日)に3トンクレーン車が到着

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搬入日の夕方、辺りは薄暗くなり室内の展示作品と山添さんがガラス戸に映り込んで、庭展示の作品「大地に円筒」が宙に浮び上って観えました。(16:55撮影)

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板間棚に赤い大理石作品10点

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昼間の展示風景 板間床に73点の作品が静かに佇んでいます。

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庭の大理石作品に繋がる板間床の作品群

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薄明りの夕暮れ時になると、会場風景は徐々に作品の息遣いが聴こえます。それぞれに長い影を伸ばし、個性を発揮して賑やかな作品群に変わります。

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夜間の展示風景

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和室の風景

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きざみもの 風景―地層に円筒1~11

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「きざみもの 風景―地層に円筒」の部分
「隙間なくノミ跡できざんで内に向かわせた力を、もう一度外に向かわせる」と山添さんに伺いました。縦横に交差するノミ跡は、織り目のようにも、糸の縫い目のようにも観えます。幾重にも重なる凹凸は、素材が石であることを忘れさせます。

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「大地に円筒」

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「大地に円筒」の部分
大理石の模様に絡んでノミ跡がきざまれています。平タガネで石を刻む時の録音を聴かせて頂きました。コッ、コッ、コッ、コッ、コッ、 コッ、コッ、コッ、コッ、コッと休みなく続くノミの音は、野鳥の軽やかな鳴き声にも聴こえ、早い心拍音にも繋がりました。心地良いリズムは音楽のようにも聴こえます。様々にイメージできるノミ音を楽しみました。

IMG_5116.jpg山添 潤 氏

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京都新聞2021年(令和3年)11月13日(土) 美術欄 掲載記事

床一面に、約100個の石のオブジェが並ぶ。素材は御影石だが、墓石のように研磨されて黒光りする姿ではなく、まるで丈夫な織物でびっしりと包まれたような、独特のテクスチャーがある。石の表面をくまなく覆っている微細な凹凸は、手で刻まれた無数のタガネの刃あとだ。「名付けるとしたら、“刻み仕上げ”でしょうか」と山添潤は言う。
山添は2000年初頭から石の彫刻を発表しているが、その作風は変遷をくりかえした。空間を圧倒する大型の彫刻作品から、技巧を凝らせた造形のオブジェへ。多くの彫刻家が取り組む、力と技で石にフォルムを掘り起こす「かたちの仕事」だ。しかし山添が一貫して抱いてきた制作への想いは「石から力を引き出したい」ということだったという。今回の作品で試みた、石の表面を刻み目で覆い尽くす表現は、コツコツと小さな力を集積させて、石の力を内部に圧しこめようとする意図がある。力の網目で石を包み込むことで、逆に石の力を内部に開放して充満させる。
台座に小さな円筒を載せた形の作品もある。これは、空間を大きさで威圧する彫刻の常道とは逆に、観客が「自ら小さくなって」視界を縮小し、作品の上に空間を感じるように促す。ちょうど、鉢の上の小さな植木に山や崖の雄大さを感得する、盆栽の鑑賞者のような創造的な認知の転換へと、みる人を誘うのだ。
これらの石の彫刻は、力のもの、こととの作用についての新たな視点を示唆する。その原動力となったのは、石という硬く重い素材に対して、コツコツと小さく重ねる、あるいは認知を転換するという「ソフトパワー」だ。彫る主体から彫られる対象への一方向の力ではなく、山添が言うところの、石との「押せば返ってくるやりとり」を通じて、その力は獲得された。(揺=銀閣寺前町 21日まで、月休)(沢田眉香子・著述業)

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搬出日(11月21日)は朝から雨が降り、水分を吸収してシミになりやすい天然大理石作品は、大切にブルーシートに包まれて搬出待ち

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搬出のためにグループ分けされた作品群は、次の出番を待つ楽屋裏の役者

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雨の中、滑らないように注意しながら650kgの大理石の搬出開始
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無事にクレーン車の荷台に乗り、ホッと一安心

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御影石という名前は日本だけで使われており、神戸市東灘区にある御影という地名が名前の由来だそうです。日本全国に多種多様な石の産地がある中、山添さんは日本の三大石材産地の一つ、茨城県真壁町で日々制作を続けておられます。来年もあちこちで開催予定の個展に向けて、作品制作にお忙しい日々が待っているようです。益々のご活躍を楽しみにしています。
※額装のドローイング作品は写真撮影時の反射による映り込みの為、作品写真の掲載を割愛いさせて頂きました。(ギャラリー揺 三橋登美栄)


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11/26 22:45 | 展覧会
頴川麻美子展(2021.10.19~31)を終えて
頴川麻美子展(2021.10.19~31)を終えて

コロナの世は、人々の心を暗くし狭くし、なかなか明るい未来を思い描けない日々となっています。でもそんな絶望感漂う中でも、諦めずに、希望を捨てず信じて歩いて、人間本来の根っこの部分がやはり強いんだと感じるそんな、時間でもありました。それぞれの人々の一生懸命な生き方を感じながら 私の今、出来ること、描く事、その世界を観ていただけたら嬉しく思います。(頴川麻美子)

IMG_4995.jpg日本画「春遥」

IMG_5001.jpg水彩画

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日本画「枯逝く」

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日本画「咲夢」

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IMG_4967.jpg 日本画「漣」

IMG_4996.jpg水彩画

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IMG_4998.jpg日本画「オクナ花」

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IMG_4991 (2) 日本画「野香」

IMG_4992 (2) 日本画「茶花」

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頴川麻美子氏

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天候に恵まれての2週間、コロナの不安が拭えない中、無事に終えることが出来ました。初めてのギャラリー揺さんでの個展。とにかく静かな美しい空間、そして手入れの行き届いたお庭、私の絵との調和が良かったと、そんな感想を多く聞きました。地味な私の絵を静かに引き立たせてくれたように感じました。
多くの方が来て下さって、感謝のひと言です。高齢になった元生徒さん達がお子さん達に手を引かれて来てくださって、胸がいっぱいになる場面が何度かありました。多くの方に支えられて励まされて、今の私が居ると、再確認した日々でした。
「枯逝く」と言う枯れたセイタカアワダチソウの絵。初めての個展に描いたモチーフ。今回新しく写生をして作品にしました。30年程前、描いたときはまだ、未来の希望に満ちていて、そんな中、枯れてゆく物達に憧れ、今から思えば背伸びした気持ちがあったように思うのですが、今、老いの悲しみ、やるせない気持ちが自身や周りに現実にヒシヒシとあって枯れゆくモチーフに気持ちが重なります。
でも、出来上がった絵を見ると、まだまだ全然だなと感じます。もっとしっかり描いて、もっとしっかり表現したい、そんな気持ちがいっぱいになりました。
また皆様にお会いできる日を楽しみにしています。(頴川麻美子)

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頴川麻美子さんは横浜出身で、京都芸術短期大学(現 京都芸術大学)で日本画を学び、京都と横浜で作家活動を続けながら、絵画教室を開催されています。各教室の生徒さんや元生徒さんたちがご来廊くださって、展覧会場は連日大盛況で賑わっていました。
頴川さんは、「写生することが好き!」と言われます。基礎をしっかり学ぶことが次の展開への早道になると確信されているので、絵画教室の生徒さんにも基礎から丁寧にご指導されていると伺いました。
頴川さんの今後のさらなるご活躍を期待し、新しい作品の拝見を楽しみにしています。(ギャラリー揺 三橋登美栄)


11/08 22:10 | 展覧会
彫刻(陶)3人展を終えて
彫刻(陶)3人展を終えて
2021.10.5(火)~10.17(日)12:00~19:00(最終日17:00) 11日(月)休廊

Sándor Kecskeméti シャンドール・ケチケメッティ(Hungaryハンガリー)
Enric Mestreエンリック・メストレ(Spainスペイン)
Yasuo Hayashi林 康夫(Japan日本)

この展覧会は、2009年にハイデルブルグのマリアンヌ・ヘラーギャラリーで開催された「彫刻3人展」が始まりです。二人の畏友とは1982年IACブダペスト会議以来の交友となりました。作品のスタイルも思考性もよく似ており、何時とはなく深く心が通じ合い、彼らとは作品についてあれこれ話すことなく肯定できるのはとても楽しいことです。ドイツのハイデルブルグの後ハンガリーのケチケメートで第2回展があり、京都が最終回ということで、今回ギャラリー揺さんがお引き受け下さり、第3回最終展の開催となりました。ご静観くだされば幸いです。(林 康夫)

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Sándor Kecskemétiの作品

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Sándor Kecskemétiの作品

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Enric Mestreの作品

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Yasuo Hayashiの作品「浪江町の景」

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Yasuo Hayashiの作品「浪江町の景」

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Yasuo Hayashiの作品「浪江町の景」

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Enric Mestreの作品

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Yasuo Hayashiの作品「浪江町の景」

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Sándor Kecskemétiの作品

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Enric Mestreの作品

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Sándor Kecskemétiの作品

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Sándor Kecskemétiの作品

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Yasuo Hayashiの作品「浪江町の景」

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Yasuo Hayashiの作品「浪江町の景」

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林康夫先生
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京都新聞2021年10月9日(土) 美術欄 掲載記事
林康夫と海外作家展 終幕 立体の探求3者共鳴
前衛陶芸の先駆者、林康夫(1928年~)が、京都で海外ベテラン作家と「彫刻(陶)3人展」を開催している。「制作のスタイルや考え方が似ている」と林が提案し、2009年にドイツとハンガリーで実施。念願だった日本開催は会場探しが難航したが、12年越しで実現させた。
戦後間もなく結成された前衛陶芸グループ「四耕会」に所属し、用の美にとらわれないオブジェに取り組んだ林は、1950年にパリで開かれた現代日本陶芸展で注目を集めた。72年にイタリヤ・フアエンツァの現代陶芸国際展で日本人初のグランプリを受賞。幾何学的で簡素な造形を試みた焼き締め、黒い陶と象嵌された線が錯視を誘う作品、立体に屋根を載せて人生を仮の住まいに託した「寓舎」シリーズを展開してきた。
 競演する2人はいずれも国際陶芸アカデミーの会議で知り合った。ハンガリーのシャンドール・ケチケメッティ(47年~)の作品は、直方体が重なったような造形で、ずれやゆがみ、隙間をはらむ。林は「情緒的な要素を排して立体の可能性を追求している」と指摘し、自身の関心との重なりを見る。
 スペインのエインリック・メストレ(36年~)は、立方体や直方体が入れ込んだり突起したりする形態の作品。「線や切込みがシャープで頑固さすら感じる。作品の形に必然性を感じさせる」と共感を寄せる。「日本では口を閉じたオブジェでも、焼いているから陶芸と決めつけてしまうが、2人の作品は立体の可能性を追求している彫刻作品」という。3人展のタイトルに「彫刻」の文字を入れたのも、旧来の陶芸概念にとらわれない姿勢を示したい思いがあったからだ。
 林は東日本大震災の被災地、福島・浪江町で見た廃屋に衝撃を受けて制作を始めた「東北」シリーズの新作を並べた。ゆがんだ白壁や屋根、ひっかいたような傷痕が震災のすさまじさを示す。屋根のある人家だが、詩情のある「寓舎」と対照的に荒涼感が漂い、10年を経てなお日常を奪われた人がいる現状を突きつける。
 同展は今回が最終回。立体の可能性の探求を続けてきた林の歩みと、志を同じくする海外作家の作品が共鳴しているかのようだ。ギャラリー揺(京都市左京区銀閣寺前町)で17日まで。月曜休み。無料。(前芝直介)
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彫刻(陶)3人展を弊ギャラリーで開催して頂く計画をお伺いしたのは5ヶ月前のことでした。林先生宅にハンガリー作家の作品とスペイン作家の作品が航空便で届き、この展覧会の準備が手際よく進められました。3ヶ国の国際展覧会の企画開催は初めてのことで、貴重な経験をさせて頂き喜んでおります。大勢の方々にマスク着用でご来廊頂き、とても興味深くご高覧くださったことを嬉しく思っております。ありがとうございました。(ギャラリー揺 三橋登美栄)


11/01 20:19 | 展覧会
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