美術作家 三橋登美栄
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松本美保子展 ―森にな~れー(2017.11.3~5)を終えて
私は植物の“タネ”に魅せられ長年収集してきました。沢山集まった“タネ”のフォトブック化≪森にな~れ≫が完成しましたので、コレクションの“タネ”と併せてお披露目の展覧会を3日間だけ開催します。(松本美保子) ![]() 細かい“タネ”を丁寧に並べる作業が続きます。 ![]() ![]() ![]() 1993年夏ブラジルを旅した折りブラジリアのカテドラル前の広場で売っていた3種類のタネに出会う 数百枚ものとても薄い羽がキチンと収納されており少しの風で舞い上がり飛び立つ(松本美保子) ![]() Red Macakoが私の一番最初の宝物となった ![]() ![]() Papora Branca Mgania Pubescens ![]() ![]() アオギリ ボート型をした実の縁に4~5個のタネを乗せ風に乗ってクルクル舞うように飛び立つ シナノキ(菩提樹) 長野県を信濃の国とも言うが このシナノキが沢山あったから・・との説もある ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 世界三大花木の一つ インドやマレーシアなど東南アジアを旅すると街路樹として植えられているのでよく目にする 景色全体が花色に染まり花で埋め尽くされるように咲く ![]() ![]() ![]() ツノゴマ 北アメリカ大陸原産「悪魔のつめ」とも「旅人泣かせ」とも呼ばれる ![]() “タネ”と言えば「固くて丸くて小さいもの」と言うイメージがあるのですが注意深く観察すると“タネ”の世界は≪不思議≫と≪知恵≫が沢山詰まった魅力的で素晴らしいデザインであることがわかります。手のひらにすっぽり入る小さな“タネ”に秘められた英知の結晶とも言える「形」の虜になった私は地面に落ちている“タネ”を拾って拾って集めるうちに300種くらい12個のコンテナが一杯になりました。 私は、テキスタイル造形作家というカテゴリーで50年ほど作品制作をしてきましたので残念なことに「植物」や「タネ」についての専門知識の欠片も持ち合わせていないのです。それなのに集めた沢山の“タネ”を見ているうちに、無謀にも本を作りたくなったのです。絵本のように見て楽しめる写真の本、かたちの面白さが際立つ本を目指しました。(松本美保子) ……………………………………………………………………………………………………………. ……………………………………………………………………………………………………………. ≪森にな~れ≫出版記念の展覧会を当画廊で開催して頂きました。 初日は12時オープン前から鑑賞者がご来廊。夕方からは教え子さん達主催のパーティーが始まり、展覧会場の室内も庭も大勢の方々で大賑わいでした。3日間で150名以上の方々に丁寧に「タネ」について説明をされ、大盛会で本当に嬉しいことですが、さぞお疲れだったこととお察しいたします。 「タネ」が大好きな人達がこんなにも沢山集まって来られることに驚き喜んでいます。私も自然が好きで植物が好きで、もちろん“タネ”も大好きで収集しています。秋は“タネ”を拾い集めるのに最適な収穫シーズンなのでワクワクします。 素敵な展覧会をありがとうございました。まだまだこれからも珍しい“タネ”の収集を続けられることと思います。≪森になーれ≫2冊目を楽しみにしています。(揺 三橋登美栄) スポンサーサイト
11/19 23:09 | 展覧会 美山荘 2017.10.31
野草一味庵、摘草料理の美山荘。自然豊かな京の花背で季節の味を楽しみます。 北原白秋や白洲正子など多くの文化人から愛され、京都から「門外不出」と言われてきました。 奈良の春日大社の社家であった初代が、京都・鞍馬の奥の大悲山にある、花背の「大悲山峰定寺」の再興に共鳴し、1895年(明治28年)に峰定寺参りの信者のために宿坊として建てたのが始まりとされています。三代目当主中東吉次さんが、1937年(昭和28年)に宿坊を料理旅館に増改築し、屋号を「美山荘」として現在の形を作られました。四代目中東久人さんが現当主です。 いつかは行ってみたい≪美山荘≫に、夫が予約しました。 京都北大路から広河原行きの京都バスに乗車(10:13)、大悲山口(ダイヒザングチ)で下車(11:35)して、 送迎バスで美山荘へ向かいます。 ![]() ![]() 数寄屋造りの建物は、宿坊であった当時の面影を今も残しています。 網代天井や吉野窓など草庵風で風情があり、清流に面して月見台を設える座敷で食事をいただきます。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 野バラの床の間 いよいよ、料理が運ばれてきます。 摘み取った季節の草花や旬の野菜に魚を取り入れた美しい料理です。 毎朝ご主人が野山に入り集めた滋味の数々。野草や山菜、茸、川魚など自然の恵みが揃います。 ![]() ① 食事酒に丹後の日本酒、銀杏朴葉味噌(田舎味噌)、蕪とクコの実 ![]() ② 白味噌に丸餅、燻製イワナのお造り ![]() ③ 八寸(地鶏卵黄身、焼生落花生、菱の実、人参、コムソウダケ、カルカン) ![]() ![]() ④ 焼松茸 ⑤ 熟成京都牛、花ザンショ ![]() ⑤ おしのぎ(もち米、ムカゴ、シメジ、百合根、椎茸) ![]() ⑥ 土瓶蒸し(鯉、松茸、三つ葉、柚子) ![]() ![]() ⑦ シラキの葉飾り 子持ち鮎杉板焼(燻製味噌漬鮎) ![]() ![]() ⑧ キノコ鍋(舞茸、なめ茸、ねずみ茸、鰻とゴボウのツミレ)栗の実の匙 粉山椒 ![]() ⑨ 栗ご飯 香の物 ![]() ⑩ デザート(炙りダイシロガキ、古代ブドウ、サルナシ、柿の葉茶のアイスクリーム) ![]() ![]() ⑪ クルミ餅 ⑫ 抹茶 ![]() 窓から樹々と清流が眺められるお手洗い ![]() 美山荘玄関前 お料理の美味しさや見た目の美しさはもちろんのこと、女将さんの気持ちの良い対応や会話にもてなされて、あっという間に2時間余りが過ぎました。名残惜しい気持ちのまま大悲山口まで送って頂き14.35の京都バスで帰途につきました。 ![]() 今夜の夕食は、美山荘お土産の栗ご飯オニギリです。 特別な一日、ご馳走様でした。
11/12 23:32 | 日々 白井千尋展(2017.10.3~15)を終えて
4年ぶり、2回目の展覧会です。 ≪展示作品≫ 1 my grass play (w35×d230×h135 山椒材) 2 mask of leaves (w180×d230×h670 漆材) 3 battle of pineneedles (w265×d25×h25 ブラックウォルナット材) 4 clover crown – unfinished (w60×d50×h375 薩摩黄楊材) 5 jet black seeds・w45×d85×h20 (カメルーンエボニー 黒御影石 陶土 磁土) ![]() 板間に2点、畳の間に2点、庭に1組。とても静かな空間が広がります。来廊者には「5点だけの展示です。お見逃しのないように!」とお伝えしました。今回は、子どもの頃の遊びがテーマで「どこに作品が?」と捜しながら観賞する、言ってみれば「かくれんぼ遊び」のような展覧会でした。 ![]() ホウノキの葉に指で穴を開けてお面を作り、男の子たちはこのお面をつけて遊びました。 ![]() ![]() 白井さんは「新芽を引っ張ってスーッと抜くのが気持ち良い。」らしいです。笹の長い新芽を楕円形の輪にして真ん中に1本通します。この3本を経糸(たていと)にし、短い新芽を緯糸(よこいと)にして1本ずつ交差させて平織りにします。これに松葉を広げて刺すと鼻緒になり、小さな笹の草履の出来上がり。これは私の小学生の頃の懐かしい思い出です。 ![]() ![]() クローバー(シロツメグサ)の花が沢山咲いていると、つい作りたくなる花の冠や腕輪。ついでに四つ葉のクローバーも捜します。冠を室内に吊るしておくとドライフラワーにもなります。 ![]() 松の葉を開いて、互いに引っ掛けて双方から引っ張り、袴が抜けたほうが負け。子ども達が2組に分かれて、松葉が2つにちぎれるまで3人抜き、5人抜きと勝ち抜き松葉相撲をすることもあり、何人に勝ったかの対抗相撲も楽しめます。 ![]() 夏に縁側でスイカを食べたら、誰が遠くまで種を飛ばせるか競争します。 ![]() ツイート 小吹隆文@kobukitakafumi 小吹隆文 @kobukitakafumi 10月6日その他 ギャラリー揺の「白井千尋展」。木彫、石彫、陶芸。葉っぱのお面、松葉相撲、スイカの種飛ばしなど、子供の頃によくやった植物遊びがテーマ。作品を見て、すっかり忘れていた子供時代の記憶が甦った。 ≪参考資料≫ 大阪トリエンナーレ1995-彫刻 第6回国際現代造形コンクール 羽曳野市賞 Habikino City Prize 白井千尋 Shirai Chihiro 1971~ 「Tropical Plants」 2000x750x1500(mm) (桜材、カシュー ) ![]() 「熱帯地域の、風土や週間に興味があり、憧れています。空間や匂い、空気などは、日本にはないものがあります。時間はゆっくりと流れ、私達が日々、過ごしている都市の雑踏や慌ただしい生活とは、掛け離れたものがあります。」「心地よい空間づくりをし、一種のRelaxation効果を図り、共有できればと考えています。」白井千尋 ……………………………………………………………………………………… 白井千尋さんの作品を振り返ってみました。約20年前の大作と比べれば、現在は小品に変化しましたが、モチーフは一貫して自然界の植物です。不思議な形態からインスピレーションを受け、生命力に触発されて心地よい空間を作り続けて来られたことに変わりはないと感じました。これからもどうぞご活躍ください。 三橋登美栄 ![]() ![]() 隣のギャラリー・アートライフみつはしの山本亜紀展(フェルト)と同時開催でした。
11/03 22:27 | 展覧会 釜本幸治展 -内にある海―(2017.9.19~10.1)を終えて
3年ぶり2回目の展覧会です。 ≪展示作品≫ 1 reflex (真鍮) 2 cloud head (真鍮) 3 dark noon (真鍮) 4 防波堤の上 (真鍮・洋白) 5 内にある海-1(真鍮) 6 内にある海-2 (真鍮) 7 泡 (真鍮・洋白) 8 浮標-Ⅲ NO2 (真鍮) 9 anthole-05 (洋白) 10 anthole-01 (真鍮) 11 anthole-02 (真鍮) 真鍮は銅と亜鉛の合金で、五円硬貨の素材としても使われています。 洋白(ヨウハク)は、銅と亜鉛とニッケルの合金で、100円硬貨の素材としても使われています。 ![]() 作品「reflex」 真鍮を硫黄で黒くして削り取る(硫化仕上げ) ![]() ![]() 作品左から「anthole-05」「anthole-01」「anthole-02」糸鋸で蟻の細部まで表現 ![]() 目の下まで水を張って、鼻と口の2ヶ所からプクプクと空気が出ます。息苦しく感じたのですが、作者の意図は「水の中に潜んで、人目につかないように密かに隠れています」でした。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 作品「泡」 自由にユラユラと揺らいでいる二人は水を得た魚のようです。 ![]() ![]() 作品「内にある海 2」水面に鑑賞者の顔や庭の樹々が映り込みます。 ![]() ![]() ![]() 作品「浮標 Ⅲno2」 苔の上に置かれた「波間に浮かぶ顔」は石のようにも見えて、庭に馴染んでいます。 …………………………………………………………………………………………………… ツイート 小吹隆文@kobukitakafumi 小吹隆文 @kobukitakafumi 9月26日 ギャラリー揺の「釜本幸治展」。真鍮による立体と平面。今回の作品は、水に浸かり顔だけ水上に出ている人物を表現している。頭部と胴体や手足の大きさの違いに注目。水を用いた珍しい作品もあった。 …………………………………………………………………………………………………… 今の現代人は明るそうに見えていても、毎日押し寄せる情報過多に混乱し、環境に適合できずにストレスを抱え込んでいるそうです。 一人で暗い海を漂っているように感じることがあっても、深く自己の内面を見つめることが大切だと釜本さんの作品から教わったようです。 これからもどうぞご活躍ください。新作を楽しみにしています。(三橋登美栄)
11/01 22:27 | 展覧会 |