美術作家 三橋登美栄
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group88/76/67展(2015.5.10~22)を終えて
≪展示作品≫ 林 康夫 1 寓舎 記憶と記録 ‘15-D 2 寓舎 記憶と記録 ‘15-E 3 寓舎 記 8,15 ‘15 4 寓舎 方影 ‘15-A 5 寓舎 物語 ‘16-1 6 赤い陶板 ‘16 中馬泰文 イ sewing button/3 ロ sewing button/4 ハ sewing button/2 ニ sewing button/1 木村秀樹 A Under the moon Light B Green Tulip ![]() 展覧会場 ![]() 木村秀樹作品「Under the moon Light」(左側)と作品「Green Tulip」 1972年から現在に至る、自己の制作史の中に存在する、いくつかの「シリーズ」を取り上げ、再検証する試み「Green Tulip」は1982~1984年に制作したチューリップのシリーズで使用した「版」を再構成し、コンセプトの再確認を行う意味で制作した新作である。(木村秀樹) ![]() 展覧会場 ![]() ![]() 林康夫作品「寓舎 方影'15-A」 作品「寓舎 記8.15'15」 ![]() ![]() 作品「寓舎 記憶と記録'15-D」 作品「寓舎 物語'16-1」 最近は様々な要素から、1点完成式とは別に複数のカタチを作り、上下の関係で作品にしているものが多くなりました。今回は二つ重ねの上部が、水平に360度回転させることによって、多面的な空間が生まれる。イメージとして重ねた上部の中心の軸を、少し移動させることも可とした作品から、固定した形だけでなく、上部の形の幾らかのズレによって、立体のイメージが幅のある膨らみを持つ、つまりイメージを固定化しない、作品として。いま興味を持っていることです。(林康夫) ![]() 高橋亨氏(右)と林康夫氏 ![]() ![]() 中馬泰文作品「sewing button3」 中馬泰文作品「sewing button 4」 ![]() ![]() 中馬泰文作品「sewing button 2」 中馬泰文作品「sewing button 1」 わたしは、自然と対極にある人工的なものに関心を持ち続けてきた。日本には、西洋のような「裸体」賛美の思想はない。裸は包み隠すものだった。これは人体だけに限らず、すべての様式の基礎がそうだと思う。洗練された様式から遊びが、そしてその遊びのなかからユーモアやエロスが自然発生したということではなかろうか。最初は裸体に布を巻きつけることから始まり、それがだんだん、工夫されると同時に機能性だけではなく装飾性が加えられたことで独自の文化が発展したということだろう。今回、選んだボタンもそういう発想から出てきたものである。(中馬泰文) ※同時期にギャラリーなかむらで中馬泰文展開催(5月10日~6月5日) ![]() 雨上がりの庭に、セレニュウム釉薬の赤が輝いています。 ![]() 夕陽の木洩れ日と作品のシルエット 京都新聞2016年5月14日朝刊(美術欄・アートスクエア)掲載記事 世代もジャンルも異なる3人の作家が参加する「group88/76/67」展が、ギャラリー揺(左京区銀閣寺前町)で開催中。家屋ふうの造形に板や伏せた帽子状のものを重ねて「寓舎シリーズ」を深化させた陶芸の林康夫(1928~)と、平面の中馬泰文(1939~)と、版画の木村秀樹(1948~)がそれぞれ新作を発表している。22日まで。月休。無料。 3回目のgroup展開催を大変嬉しく思っております。(ギャラリー揺 三橋) スポンサーサイト
05/28 11:40 | 展覧会 金沢健一展 ―Scores―(2016.4.26~5.8)を終えて
2008年(二人展)、2013年(個展)に続いて揺で3回目の展覧会です。 ≪展示作品≫ 1―4 Scores1800_1-4 (2016) アルミニウム 音楽制作 浦裕幸 5 断片化 Apr.2016-1 (2016) アルミニウム 6 断片化Apr.2016-6 (2016) アルミニウム 7 断片化200×5 Feb.2016-1 (2016) アルミニウム 8 断片化200×5 Feb.2016-2 (2016) アルミニウム 9 断片化350×2 Apr.2016-1 (2016) アルミニウム 断片化350×2 Apr.2016-2 (2016) アルミニウム 10 断片化Apr.2016-4 (2016) アルミニウム Scores1800_1 彫刻の展開図を音楽家の浦裕幸(ウラ ヒロユキ)さんが五線譜上で1800小節に置き替えることで音楽が生まれました。1作品9分間の演奏で、板間は作品の下から上方向の、畳の間は作品の上から下方向(逆再生)の音楽が聴こえます。 ![]() ![]() ![]() 作品「断片化350×2 Apr.2016-1(2016)」 作品「断片化350×2 Apr.2016-2(2016)」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() アルミニウム角パイプの各面に3種類の幅と深さの違うスリットが刻まれています。 作品「Scores1800_1-3 (2016)」が板間に3点、スリットを刻んでいない作品「Scores1800_4 (2016)」が畳間に1点展示。スリットが無い作品は9分間の無音状態が続きます。 その時に「演奏が鳴ってない。」と私に音楽の再生を促す来画者もおられました。 ………………………………………………………………………………………… 2012年、ピアノ独奏会(京都市内のカフェ・モンタージュ)で、ジョン・ケージの「冬の音楽」の中の3楽章で「4分33秒」に渡って全く演奏することのない「無音」を聴いた時のことをブログに公開しました。 ≪参考:ブログアドレス http://artgallerytomie.blog.fc2.com/blog-entry-129.html≫ ………………………………………………………………………………………… 音が途切れて無音になると耳を澄まします。その時の聴覚は研ぎ澄まされて今まで聞こえなかった音が聴こえてきます。 騒音が溢れ、商品が山積みされた環境で日々を過ごしている現代人にご覧頂きたい展覧会でした。 ![]() ![]() 太陽光線は作品の上に庭の植物の影を落とし、作品の内に「影の音符」を作曲しました。 風が揺れる屋外で、もう一つの音楽が聴こえてきました。 ![]() 京都新聞2016年5月7日朝刊(美術欄・ギャラリー)掲載記事 ≪美術と音楽が育んだ豊かな創造 金沢健一展・斉藤祝子展≫ 「音楽」をテーマに二つの個展を紹介しよう。 まず、東京を拠点に活動し関西での個展歴も数多い金沢健一。彼は鉄などの金属を素材にした幾何学的形態の彫刻を制作している。それらのなかには打楽器の機能を持つものや、振動により音の波形を視覚化させるものなど、音楽との関係が深い作品があり、今回の新作もその一つだ。 会場にはアルミの角パイプが林立している。各面に3種類の幅と深さのスリットが刻まれており、その造形要素を音や時間に見立てると音楽を作ることができるのだ。実際本展では、作曲家の浦裕幸が作品の展開図を五線譜に見立てて作曲を行っており、会場には金沢の作品とそこから派生した浦の楽曲が空間を満たしている。どちらも抑制のきいた作風で、静けさのなかにもピンと張りつめた緊張感が心地よい展覧会だ。 後半省略(小吹隆文・美術ライター) 最後は金沢健一さんの文章で締めくくらせて頂きます。 ≪展覧会を終えて≫ 5月の連休を挟む木々の緑鮮やかな、風爽やかな季節。2年前の秋の個展と同様に今回もガラス戸をあけ、板の間と畳の間の室内と庭を結ぶ開放的な空間とした。揺が閑静な住宅地にあるとはいえ、この庭の凛とした静けさに、心が落ち着く。作品の数を絞り、空間全体が「静けさ」をテーマとしたひとつの作品となるような展示構成を考える。作品の造形要素をそのまま音に置き換えた音数の少ない浦裕幸の音楽は作品の鏡のような存在として時間を刻んでゆく。来場した方から「作品の存在が主張することなく、捉われのない、観客と共存するような空間」というお言葉をいただいた。揺は私にとって、通常のギャラリーや美術館とは違った、作品の在り方や感情を起こさせる空間なのである。 (金沢健一)
05/13 11:34 | 展覧会 |