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笹谷晃生展 景観の彫刻「野草園」(2013.6.4~16)を終えて
笹谷晃生展 景観の彫刻「野草園」(2013.6.4~16)を終えて


入口
入口
2007年、2010年に続く3回目の笹谷晃生展は、梅雨の晴れ間に作品と木々の若葉が共演しています。

蔓景と掌中景
壁から生まれる蔓のしなやかな作品「蔓景」上
大切な宝物を両手で包み込みたくなる作品「掌中景」下

盆景
丸い盆栽鉢が斬新な作品「盆景」

 展覧会場1
展覧会場1
「洋間、和室、庭を区切ることなく、全体を一つの空間として捉えたい」と伺いました。

 展覧会場2
展覧会場2
鉄で形作られた作品は、目線を低くすると床から生えているようです。

 作品と庭
作品と庭
「ススキとその根元に咲くナンバンギセルとの関係をイメージして制作した作品」と伺いました。

 和室展示1
和室展示1
畳を一枚取り除いて現れた高低差は、和室を自然界の野草園に変えます。

 和室展示2
和室展示2
銅と鉄の植物がここで成長しているかのように、風に乗って大きなトンボが遊びにきました。

野景懸崖
低く垂れ下がった幹や枝に長い歴史が観える作品「野景懸崖」

花景三弁花
「花景 三弁花」

三弁花
「三弁花」
銅板を打って(鍛金)、椿の実が弾けたような形に作られた花弁は、自然界の美しさが凝縮されています。少年時代からの旺盛な好奇心を今も持ち続けておられる笹谷さんの作品は植物のエネルギーに溢れています。

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京都新聞2013年6月15日(朝刊)美術欄 記載記事

[金属彫刻の柔軟性]
キャリアの長い笹谷晃生は、銅で作った野草と、100本もの細い鉄線を垂直に林立させる作品を発表。展示会場は畳の間だ。鉄という重厚な素材から、和みの空間に沿うヨシ原のような景観をあらわしてみせた。金属彫刻というと、物質の重厚さ、存在感の強さで圧倒するもの、という先入観があった。しかし、笹谷の鉄の線の勢いからは、自然の生々しいエネルギーを思い浮かべずにはいられない。展示空間が畳の間であろうと、この作品には、それにとけ込む柔軟性、見る人に環境や自然へと思いを及ばせる力がある。金属彫刻の強みと強さについて考えた。 (沢田眉香子・著述業)

※ 対照的な二人の展覧会の紹介記事「金属彫刻の強さと柔軟性」の中から笹谷晃生展に関する文章のみ転載いたしました。

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最後に笹谷さんの文章で締め括らせて頂きます。

「野草園 個展を終えて」
 揺で3回目の個展となる今回の発表では、日常的な生活の場としての印象が強い和室の性格を抑えることと、洋間とそれに隣り合う和室、そして庭の3つの空間にほぼ同じ要素の作品を配置して全体としての表現を目指した。
 和室がごく自然に展示空間として受け入れられるために、和室の畳一枚を取り除いて、そこに洋間の床と同じ高さの平面が現れるようにした。和室はその中心の畳一枚を取り除くことで、和室としての印象から大きく遠ざかり、また洋間の床と同じ高さの平面の出現によって洋間との繋がりが強まり、広がりをもつ展示空間に変貌したと思う。
 今回の展示では、具体的には高低2つの高さの異なる作品構成を、洋間、和室、庭の3つの空間にわたってインスタレーションした。幼少期の記憶の「ススキの生い茂る野原の風景」や、園芸の仕事で知った「ススキとその根元に育つナンバンギセルの関係」などかから生まれた作品である。そして一昨年の岐阜県池田町にある極小美術館での「像の檻」展や、昨年の神戸のギャラリー301 BAZARA倶楽部での個展「景観の庭」で発表した作品を「野草園」として発展させたものである。
 私たちの記憶のどこかに紛れこんでしまった懐かしい景観をこの展示の中に感じ取ってもらえた人があれば嬉しい限りである。    笹谷晃生

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06/19 20:28 | 展覧会
扇 千花 展(2013.5.21~6.2)を終えて
扇 千花 展ー余白が生まれるー(2013.5.21~6.2)を終えて

展示会場1
展覧会場1
「余白が生まれる」展の説明は難しいです。が言葉の説明不要のインスタレーション展なので、会場の空気感をゆっくり体感して頂く展覧会です。

展示会場2
展覧会場2
でもインスタレーションに不慣れな鑑賞者には、一見捉えどころのない空間表現かもしれません。
「図があることによって地が現れてくることに興味があります。地と図の関係性で、空間を表すために図が必要になります。」と扇さんは話されます。

クッション
麻布のクッションは発泡バインダーに顔料を混ぜてプリントしています。レース編みかと見間違う理由は素材感を大切に制作されているからでしょう。この空間に置かれたクッションとクッションの余白に鑑賞者が佇むと、空気感は大きく変化し、感性に任せて感情が動き始めるとインスタレーションの物語が展開します。

クモの巣
蜘蛛の巣? キノコ? 自由な発想で観賞できます。

謎の生命体
水中に漂う謎の生命体にも見えます。

水面に浮かぶ
石畳に木洩れ日が落ちると、庭は水に満ちた池に変わり作品は水面に浮かびます。
水中の余白は空気の泡、空気中の余白は水滴です

吊り下げる
和室に吊り下げられた作品は庭の苔に生えた作品と共鳴します。

例年より早く梅雨に入り、庭の木々はより複雑に深い緑色に変化し、水滴に輝く作品は成長します。
いつもは風や太陽が揺らぐ空間ですが、今回は水への意識が加わった展覧会です。

どこからか音も無く歩いて来られる静かなイメージの扇さんの無意識の世界は水の中に例えられます。
そこは社会の常識もルールも無く現実から切り離されていて、扇さんは水を得た魚のように自由に、解き放たれた空間で思考と制作を今日まで続けて来られました。
今後のご活躍を楽しみにしています。

最初に説明不要といいながら蛇足文を書きました。

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京都新聞2013年6月1日朝刊(美術欄)記載記事
扇千花展
レース地模様がプリントされた、優しい色合いのクッションが室内に点々と置かれ、天井からはレース模様の針金状の作品がぶら下がる。庭に面したガラス戸は広く開かれて、庭にも所々にキノコのように、レース模様の針金が生える。外と内とがうまく結び付けられ、「余白」の放つ余韻を楽しめる。
                        (加須屋昌子・京都市立芸術大学准教授)

06/03 13:37 | 展覧会
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