美術作家 三橋登美栄
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比叡山 平子谷 2012年5月29日
「自然と語る会」第345回 参加者15名 2回連続不参加で気力・体力が落ち、約一カ月半ぶりに山歩き出来るか少し心配でしたが、自然からエネルギーをもらって歩ける、と気楽に参加しました。 ........................................................................................................................................ 京阪膳所駅発8:41発→京阪穴太駅8:58着→平子谷→桜茶屋(昼食)11:40→無動寺(弁天堂)→ケーブル延暦寺駅14:30発→ケーブル坂本駅14:41着→芙蓉園→京阪坂本駅15;58発→帰宅 ........................................................................................................................................ ![]() 京阪穴太駅から歩き始めると、先ずホザキマンテマ(ナデシコ科マンテマ属)が咲いていますが、2年前の群生に比べると随分少なくなりました。ヨーロッパ原産の帰化植物で、春から6月の中頃にかけて花を咲かせます。牧野新日本植物図鑑によると、マンテマは弘文年間(1844~1847)に渡来した植物で元々は観賞用。名前は渡来したときの名称:マンテマンが省略されたそうです。 墓地を左手に見ながら穴太野添古墳群を通り、四谷川沿いに登ります。 ![]() ツボミオオバコ(蕾大葉子 オオバコ科:最近はゴマノハグサ科との学説もあるそうです) 別名はタチオオバコ。北アメリカ原産の帰化植物で、花が小さくて目立たず蕾のまま(閉鎖花)なのでツボミオオバコと呼ばれています。在来種のオオバコと違って葉は地を這わずに立ち上がり、白い短毛が生えて柔らかい印象です。造成したような場所はほとんどこの種で、在来種のオオバコは見かけません。昔ながらの農道などには在来種がみられます。 ![]() モチツツジ ![]() ウツギ(ウノハナ) ![]() ジャケツイバラ(蛇結茨)も2年前より花数が少ないです。 日当たりの良い山野や川原に生えるマメ科の落葉蔓性植物です。枝が蔓状で、鋭い鉤爪状の棘が付いて、これで他の木や植物に這い登ります。黄色い花の花弁は5枚で、そのうち1枚に赤い筋が入っています。 ![]() コツクバネウツギ ![]() コアジサイ ![]() 道端のクリンソウ ![]() コバンノキ ![]() コバンノキは小判型の葉の裏側に小さな花が咲いています。 ![]() 平子谷林道の分かれ道:橋を渡って左に進みます。 ![]() フタリシズカ(二人静 センリョウ科) 山林の比較的暗い場所に分布し、和名は2本の花序を静御前とその亡霊の舞姿にたとえたもので、ヒトリシズカと対を成します。ただし花序は2本とは限らずに3~4本つく例もあり、この株も4本です。 ![]() ヤブデマリ ![]() 道端に咲くクリンソウの周りには、小さい株が一面に茂っています。 数年後には、あちらこちらに見事に大群生すれば、平子谷は別名クリンソウ谷とかクリン谷とか呼ぶのはどうでしょう。 ![]() 流れる水に接して、クリンソウがきれいに並んで咲いています。 ![]() 急な木の階段をハーッハーッと息切れして登る頃から、空が暗くなり遠くで雷が鳴り始めました。長い階段を登り切り、桜茶屋で昼食のお弁当を食べ始めますが、近づく雷と降り始めた雨に落ち着けず、食後の休憩も無いまま、雨具を来て大急ぎで歩き始めます。頭上の雷鳴に耐えながら日暮れのように暗い樹々の中を黙々と足早に無動寺まで韋駄天走りとまでは行きませんが、日頃の2倍以上の速度で前屈みに突進し、全員無事に無動寺谷に到着します。その頃には雨も上がり、鮮やかな緑の中で大群生のクリンソウをゆっくり眺めて十分に堪能しました。 ![]() クリンソウ群生は、無動寺の方々のお世話のお陰か、年々見事に育ち天空の花園のようです。 ![]() ヤブデマリの見事な一本立ちとクリンソウの共演は素晴らしく、去り難いスポットです。 遠くの巨大な杉の枝で開花しているセッコクをデジカメのズームで上手く撮れたので、「見て!見て!」と自慢している間に、削除ボタンに触れたのか、このデータは音も無く消えました。本当に残念なことをしました。 ![]() 途中の水場で蛙の卵を見ていると、居合わせた2人の修行僧(?)は、お参りをして仏様にお供えするお水を手提げの木桶に汲んで静かに行かれました。 ![]() 坂道を登り切ると、ケーブル延暦寺駅近くの無動寺参道入り口に出てきます。 14:30のケーブルに乗車してケーブル坂本駅まで降ります。 ![]() 雷疲れを癒そうと、芙蓉園にて休憩。 雨に洗われた緑の庭でゆっくりティータイムの予定でしたが、また雨が降り始めて室内のテーブル席に移動します。 ![]() コーヒーが苦手な私はわらび餅を注文。しっかりした触感のあっさり味でした。 ようやく元気になり、京阪坂本駅から乗車して帰宅しました。 今日もお世話になり、楽しい一日をありがとうございました。 スポンサーサイト
05/31 22:23 | 山歩き 望月重宏漆芸展(2012.5.8~13)を終えて
アートライフみつはしで望月重延・乾漆展、ギャラリー揺で望月重宏・漆芸展を開催することになりました。2会場でお父様とご子息様、お2人の漆芸(※1)共演です。 望月重宏氏の展示作品 板間にレスポールギター1点、かんざし17点、コースターとトレー数点 和室にコースターとトレーを多数点 ![]() 新緑の庭を背景に直射日光を避けて、世界で一本のフルカスタムメイドギター”No 07GR001”が会場を引き締めています。このレスポールギターのトップはハードロックメープル、ボディーはマホガニー、指盤はローズウッド、と選び抜かれた木材を用い、2年半以上の歳月をかけて完成された楽器で、ミュージシャンに演奏されたことがあるそうです。 ![]() 「興於詩 立於禮 成於楽」(シニオコリ レイニタチ ガクニナル)は孔子の言葉で、望月重宏さんのお母様の書を螺鈿細工(※2)でボディーに刻み込まれています。その意味は「人間の教養は詩によって震い立ち、礼によって安定し、“音楽”によって完成する。」だそうです。 ポジションマークにも螺鈿細工が輝いています。 ![]() 黒漆の上に桜、菊、牡丹、鳥などの蒔絵(※3)が重厚に輝き、コントロールノブの細部にわたるまで緻密な漆芸が施されているのに目を見張ります。 ![]() コースター、トレー MDF(medium density fiberboard)に黒漆仕上げと、白ウレタン仕上げのシンプルなトレーやコースターは、自由なアイディアとアレンジとでアート作品を使えば、暮らしが華やぎます。 ![]() 展示風景 ![]() 黒漆に蒔絵、白ウレタンに蒔絵のかんざしは新しい伝統美で、和装はもちろん洋装にも似合いそうです。 ![]() かんざしの部分 黒漆に流水文の蒔絵はモダンです。 ![]() 和室展示風景 ![]() ミュージシャンにも見える望月重宏さんは、漆工芸界重鎮の望月重延氏に師事し、漆芸制作活動をしながら、株式会社プライマリースタイル(※4)の代表でチーフデザイナーでもあります。 今後も、更に新しいデザインを考案し、日本の漆芸を世界に広げてご活躍されることを楽しみにしています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京都新聞2012年5月12日朝刊(美術欄)掲載記事 望月重宏展 漆を軸にさまざまなマテリアルを駆使して、伝統工芸を模索している。華麗な蒔絵(まきえ)を施したエレキギターや、漆とウレタンを併用したかんざし、ミニマルなデザインの皿などを出品。(美術ライター 小吹隆文) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (※1) 漆 漆はその英語名を「Japan」と表すように日本伝統工芸の代表格として古くから世界に認められてきました。この呼吸する自然の素材は、堅牢にして優美、日用と芸術性の両面を兼ね備え、使う毎に色合いを深めると云う変容の美をも有する他に見ない特有な素材として親しまれています。漆は強度の高い接着剤であると同時に器体を保護する堅牢な塗料として縄文、弥生時代からすでに様々な用途に使われていました。漆黒と黄金の美意識、それを支える多くの技法は様々な変容を遂げながら現在に引き継がれています。 (※2) 螺鈿 象嵌といわれる金属・陶磁・木材などの表面に金・銀・貝などをはめ込む技法として知られる「螺鈿」には一般的に夜光貝、蝶貝、あわび貝などの殻の内側部分が用いられています。裏地塗りの色が表に出るため表面の七色の光沢には様々な基準色を表現する事が出来ます。漆芸には「埋め込み・押し込み・掘り込み」と呼ばれる技法があり、いずれも卓越した技術が必要とされています。貝殻と云う自然の産物を用いるため、ふたつとして同じ輝きのない貴重な素材として、古来から様々な装飾技法として使用され細密な世界観を表現してきました。 (※3) 蒔絵 日本独自の漆芸技術「蒔絵」は漆の接着力を利用し金粉・銀粉などを蒔く時で金銀模様を施す技法です。その幅広い表現方法は鎌倉時代から室町時代に掛けての200年あまりで確立され漆の持つ美しさを一層豊かなものにし、後に「漆」が「日本の美意識」として世界に認められる大きな一因を為しました。 (※4) PRIMARY STYLE(プライマリースタイル) 漆を表現の軸とし、様々なマテリアルと積極的に結びついていくことにより、伝統工芸の新しいスタイルを提示しています。また、独自に培ってきたノウハウにより、次代のプロダクト製品の企画・開発・制作を行い、ひとつのプロジェクトを、ムーブメントへと繋げていく試みを続けています。 以上、※1~4の注釈は(株)PRIMARY STYLEの紹介文章から引用させて頂きました。
05/14 18:21 | 展覧会 アンヘラ・メラヨ展(2012.4.17~29)を終えて
アンヘラ・メラヨ(Angera Merayo)さんは、バルセロナで壁画制作や銅版画を学び、フィゲーラス在住のスペイン女性作家です。現在は広大な土地を購入して財団法人を立ち上げ、若い美術家育成などの美術活動にも積極的で、年齢を感じさせないパワフルな行動力が魅力です。 私が2009年12月にスペイン・ヘローナで、一か月間のグループ展「日本現代アーティスト展」に参加出品した時も、大変お世話になりました。その時のご縁もあり、アンヘラさんの友人である前田マイコさんの企画で、個展(スペイン大使館後援)を開催させて頂くことになりました。 ![]() 玄関の作品「HUELLAS XVⅢ」と三角の木洩れ日。 展覧会中は作家在廊の予定でしたが、ご家族の用事で残念ながら来日できなくなりました。 前田マイコさんと夫と私の3人での展示作業は、和の空間に日本人の感覚が入り、シンプルな会場に仕上がりました。総点数17点の展示です。(布作品3点、紙作品5点、パネル作品9点) 最終日は展示替えで、パネル作品12点を和室に追加して賑やかな雰囲気に変わります。 ![]() 展示風景 パステル調のブルーやピンクなどの優しい色の組み合わせでありながら、描かれているモチーフは日本人とは異なり、感性の違いが新鮮なイメージの作品です。小品には漢字を思わせる形象があり、日本人には気づかない漢字の面白さや美しさを再確認しました。 ![]() 庭から夕陽が射し込み、作品に木々の影が重なって美しいです。 ![]() 和室展示 畳にスペイン絵画が響き合います。 ![]() お茶道具 小品12点を風炉先屏風に見立ててずらりと並べ、その前にお茶の御道具を設えます。「ピラミッドのような形に作品を沢山展示してください」がアンヘラさんのご希望でした。 ![]() クロージングパーティー 作家不在で寂しい展覧会になりがちなところを、前田マイコさんご夫妻のご協力で、2週間の展覧会が終わる最終日には、スペイン風に美味しいワインとチーズとクラッカーが届き、きだてさん差し入れのグレープフルーツが加わってクロージングパーティーを開き、日本の文化・お抹茶を立ててお饅頭スイーツを楽しみました。スペイン語を学んでいる学生さんも飛び入り参加で、アンヘラさんの作品をバックに、日常の豊富な話題で盛り上がって、展覧会を締め括りました。本当にありがとうございました。
05/05 22:04 | 展覧会 |